建蔽率(建ぺい率)は、敷地面積に対する建築面積の割合を示す重要な指標であり、都市計画法に基づいて地域ごとに異なる規制が設けられています。しかし、特定の条件下ではこの建蔽率が緩和されることがあります。
本記事では、建蔽率が緩和される具体的な条件について詳しく解説するとともに、準防火地域と耐火建築物に関する建蔽率の特例についても紹介します。
建蔽率(建ぺい率)とは?
建蔽率(けんぺいりつ)とは、敷地面積に対する建築面積の割合を示す指標です。具体的には、敷地の広さに対してどれだけの面積の建物を建てることができるかを示します。この割合は都市計画法に基づき、地域ごとに異なる規制が定められています。
建ぺい率の計算式は
建蔽率=建築面積 ÷ 敷地面積 × 100 |
です。
例えば、敷地面積が100平方メートルで、建蔽率が60%の場合、その敷地に建てられる建物の最大の建築面積は
100平方メートル×0.6=60平方メートル |
となります。
建蔽率は主に建物の密度を制限し、風通しや日照、消防活動の確保など、都市環境の安全性や快適性を維持するために設定されています。
建蔽率の制限は住宅地や商業地、工業地などの用途地域ごとに異なり、それぞれの地域の特性に応じて適用されます。
建蔽率(建ぺい率)の緩和条件とは
建蔽率が緩和される条件として、
①特定行政庁が指定する角地である場合
②防火地域内で耐火建築物等である場合
③準防火地域内で内で耐火建築物等または準耐火建築物等である場合
に建蔽率が+10%されます。
中でも①と②、①と③は併用可能であるため最大で+20%されます。
ここではそれぞれの条件について紹介します。
特定行政庁が指定する角地である場合
建築基準法の改正により、特定行政庁が指定する角地では建蔽率が10%緩和されることがあります。角地とは二つの道路に面した土地のことで、通常の土地よりも日当たりや通風が良く、開放感があるため建築面積の制限が緩和されるのです。
例えば、通常の建蔽率が60%の地域では、角地に建てる建物は10%の緩和を受け、建蔽率が70%になります。
敷地面積が100平方メートルの場合、通常の建蔽率60%では
100平方メートル×60/100=60平方メートル |
となりますが、角地での建蔽率70%の場合は
100平方メートル×70/100=70平方メートル |
と70平方メートルまで建築可能です。
この緩和の理由は角地は日当たりや通風が良いため、建物が密集しても居住環境が悪化しにくく、防災面でも有利であることにあります。
さらに、角地は消防車や救急車がアクセスしやすく防災面での安全性が高いとされているほか、都市の景観形成においても重要な役割を果たし、適度な緩和により街並みの美観や調和を保つことができます。
このように、角地における建蔽率の緩和措置は、住環境の向上や防災面での利点を考慮したものであり、特定行政庁の指定を受けることで適用されます。
防火地域内で耐火建築物等である場合や準防火地域内で内で耐火建築物等または準耐火建築物等である場合
建築基準法の一部を改正する法律により、特定の条件下で建蔽率が10%緩和されることがあります。これは、都市の環境改善や建築物の有効利用を促進するための措置です。
具体的には、通常の建蔽率に加え、特定の条件を満たす場合に建蔽率が10%上乗せされるというものです。この緩和措置が適用される条件の例としては、防火地域や準防火地域における一定の防火性能を備えた建物や、良好な住環境を維持するための計画的な都市開発が挙げられます。
例えば、ある地域の通常の建蔽率が60%と定められている場合にこの地域で防火性能を強化した建物を建てる計画があると、その建物に対しては建蔽率が10%緩和されて70%まで認められることになります。
これにより、敷地面積が100平方メートルの場合、建築面積の上限が通常は60平方メートルだったところが、70平方メートルまで増やすことができるようになります。
通常の建蔽率=60% 緩和後の建蔽率=60%+10%=70% 敷地面積=100平方メートル 緩和後の建築面積=100平方メートル×(100/70)=70平方メートル |
この緩和措置により、より多くの建築面積を確保することが可能です。
建蔽率(建ぺい率)に制限がない場合とは?
建築基準法には、特定の条件下で建蔽率に制限がなくなる場合がいくつか定められています。これらの特例により、特定の建物や場所においては建蔽率の上限が緩和され、建物の面積を広げることが可能となります。
ここでは建蔽率に制限がない3つのケースについて詳しく説明します。
建蔽率の限度が8/10の場合
防火地域内の耐火建築物や公共の利益を提供する施設、公共空間内の建築物など特定の地域では建蔽率の限度が80%に設定されています。
これは通常の制限よりも高く、建物の建築面積が広く認められます。
派出所、公衆便所などの公共施設
派出所や公衆便所といった公共の利便性を提供する施設は、建蔽率の制限が適用されない場合があります。
これらの施設は地域社会にとって重要な役割を果たすため、建設を容易にするための特例が設けられています。
公園、広場、道路、川などの公共空間内の建築物
公園や広場、道路、川などの公共空間内に建てられる建築物で、特定行政庁が安全上、防火上、衛生上支障がないと認めて許可したものも、建蔽率の制限がありません。
これにより、公共の利益や安全が確保される範囲での建築が可能となります。
2025年に建築基準法が改定される
2025年に建築基準法が改訂されます。ここではその変更点を紹介します。
木造建築に関する規定の変更
木造建築物の構造基準が大幅に変更されます。
簡易的な構造計算(許容応力度計算)で建築できる高さが現行の13mから16mに引き上げられるほか、延べ床面積が500㎡を超える場合に必要だった高度な構造計算が、300㎡を超える場合に引き下げられます。
これにより、中小規模の木造建築の設計がより柔軟になるでしょう。
大規模建築物の木造化促進
大規模な木造建築物に関する規定も緩和されます。
床面積3,000㎡を超える建築物で火災時に周囲に大規模な危害を及ぼさない処置が取られていれば、柱や梁などの構造木材を“表し”にして設計することが可能になります。
これにより、デザインの自由度が高まり、内装の木質化が進むことが考えられます。
既存建築物の改修に関する緩和
既存建築物の改修においても、高さ制限や建蔽率、容積率の特例が認められます。
例えば、リフォームやリノベーション時に屋根断熱化や太陽光発電設備の設置に伴い建物の高さが増加する場合、特定の条件下でこれらの制限が緩和されます。
また、日除けのための庇の設置についても建蔽率の緩和が適用されることがあるでしょう。
防火規定の変更
防火地域内の耐火建築物に関する規定が合理化されます。
具体的には、耐火性能の基準が60分刻みから30分刻みに精緻化され、防火壁などで区画された部分は別棟扱いとして緩和されることが可能となります。
これにより、防火性能を確保しつつ、設計の自由度が向上することが考えられるでしょう。
省エネルギー性能の向上
全ての新築住宅や建築物に対して、省エネルギー基準への適合が義務化されます。
これにより、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の普及が促進され、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが強化されるとのことです。
建蔽率(建ぺい率)の緩和に関するQ&A
ここでは建蔽率(建ぺい率)の緩和について知る上で、よく出てくる質問を紹介します。
ガレージは建ぺい率に含まれますか?
ガレージが建蔽率に含まれるかどうかは、ガレージの位置や構造によって異なります。
例えばガレージが建物の一部として屋根があり、固定されている場合、そのガレージの面積は建蔽率に含まれます。これは、建蔽率が敷地面積に対する建築面積の割合を示すため、屋根付きガレージも建築面積として計算されるためです。
一方でカーポートのような簡易的な屋根だけの構造物については、地域の建築基準や特定行政庁の判断によって異なる場合があります。通常、カーポートも建蔽率に含まれることが多いですが、場合によっては緩和措置が適用されることもあります。
建ぺい率角地緩和の建築基準法は?
建築基準法では、角地に位置する敷地について、通常の建蔽率に対して10%の緩和が認められています。
これは、角地が二方向に道路に面しているため、日当たりや風通しが良く、建物が密集しても居住環境が悪化しにくいとされるからです。
また、防災面でも角地は消防車や救急車のアクセスが良好であるため、このような緩和措置が適用されています。
建ぺい率を変更することはできますか?
建蔽率を変更することは特定の条件下で可能です。
防火地域内の耐火建築物の場合、通常よりも高い建蔽率が認められることがあります。
例えば、通常の建蔽率が60%の地域で耐火建築物を建てる場合、建蔽率が10%緩和されて70%まで建築可能です。
まとめ
建蔽率(けんぺいりつ)は、敷地面積に対する建築面積の割合を示す指標です。
建蔽率が緩和される条件として、特定行政庁が指定する角地、防火地域内での耐火建築物、準防火地域内での準耐火建築物などがあります。
また、防火地域内の耐火建築物や公共施設、公園などの公共空間内の建築物については、建蔽率の制限が緩和されることがあります。
できるだけ広い家を建てたい場合は、建蔽率の緩和条件を活用するといいでしょう。
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