斜線制限とは?用途地域や種類一覧をわかりやすく紹介!

「憧れの注文住宅、せっかくなら外観の形や高さにこだわりたい!」

‥なんて思っている人もいるのではないでしょうか?

たしかに、注文住宅の魅力は設計一つひとつの自由度が高いことにありますが、実は建物を建てる場所によって「傾斜制限」が設けられており、建物の高さや形状が制限されるケースも珍しくありません。

そこで今回は、新しく建物を建てる際に知っておきたい傾斜制限について、わかりやすく解説します。

4種類の斜線制限の違いとは?それぞれの用途地域も紹介

傾斜制限とは、建物と建物の間に空間を作り、日照・採光・通風を防げないために設けられた制限です。

建物の各部分の高さを制限することで、圧迫感を防いだり、街の美しい景観を維持する目的があります。

また、傾斜制限は以下4つの種類に分類されます。

  • 道路斜線制限
  • 隣地斜線制限
  • 北側斜線制限
  • 日影規制

道路斜線制限は、接している道路の幅員に基づき、道路側に面した建物部分の高さを制限するものです。

これは、道路への採光や通風を確保することが目的であり、現状道路斜線制限が適用される地域は存在しないため、家を建てるすべての場所に道路斜線制限があるという認識で間違いありません。

隣地斜線制限は、隣地側に面した建物の高さが20mもしくは31mを超える部分についての制限です。具体的には、敷地の周囲にある隣地境界線から発生する架空の斜線に対し、高さが超えないように設計しなくてはなりません。

北側斜線制限は、北側の道路側もしくは北側の隣地側に面した建物部分の高さに対する制限です。良好な住居環境を守ることを目的に、各住戸の日当たりを確保します。

日影規制は、冬至の日(12月22日頃)を基準にまったく日が当たらないことのないよう、建物の高さを制限する規制です。環境や土地の事情は地域によって異なるため、自治体の条例で指定されることもあります。

以上の斜線制限は、建物を建てる場所の「用途地域」によって決まります。ここで、用途地域に対して制限される斜線制限について表でご紹介します。

道路斜線制限隣地斜線制限北側斜線制限日影規制
第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域田園住居地域
第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域第二種住居地域準住居地域
近隣商業地域商業地域準工業地域工業地域工業専用地域近隣商業地域◯
準工業地域◯
用途地域の指定がない地域

以上のように、道路斜線制限に関してはすべての用途地域が対象となるため、建物を建てる際は必ずと言っていいほど制限が設けられていることになります。

また、道路に面している戸建てやマンション、オフィスビルなどを見ると、たまに建物上部が三角柱状に切り取られたように見える部分がみられますが、これは斜線制限が関係しています。

制限内で高さや容積をできるだけ確保するように設計すると、建物上部が切り取られたように見える形状の建物になります。

では、これまでに紹介した4つの斜線制限についてよりくわしく解説します。

道路斜線制限とは

道路の採光や通風を確保する目的で設けられる道路斜線制限では、建物を“道路斜線”に収める必要があります。

具体的には、建物に面した道路の反対側の境界線から、土地のある地域のルールに従って、規定の勾配で斜線を引いて決定します。

ただし、道路から一定距離だけ離れたところからは制限がなくなるため、直線的に建てることが可能です。

隣地斜線制限とは

隣の敷地に建つ建物の通風や採光を確保する目的で設けられる隣地斜線制限では、隣地境界線を基準に引かれる隣地斜線により、建物の高さが制限されます。

高さ20mまたは31mを超える建物に対する制限なので、一般的な住居では適用されないことがほとんどです。

北側斜線制限とは

北側敷地にある建物の南からの日照を確保するために設けられた北側斜線制限では、北側の隣地境界線を基準に、一定の高さから規定の勾配で引いた斜線を超えないよう建物の高さが制限されます。

マンションでは北向きのルーフバルコニーが多く見られますが、これも北側斜線制限が関係していると言えます。

日影規制とは

冬至の日を基準に周囲の建物の日照を確保するために設けられた日影規制では、冬至の日の午前8時から午後4時(北海道は午前9時から午後3時)までの間、建物によって周囲の日当たりが妨げられないように建物の高さが制限されます。

ただし、日影規制は建物が一定時間以上日影になることを制限するための規制であり、道路や水面などに面している場合は緩和される可能性があります。

斜線制限の緩和ルール

斜線制限は周辺環境の保全が目的とされていますが、それぞれの土地や環境により制限が特例で緩和されるケースがあります。

具体的には道路や水面に面している、隣地との高低差があるなど、周囲の環境を害する恐れがないと判断される場合に緩和対象となります。

  • 高低差緩和
  • セットバックによる緩和
  • 公園による緩和
  • 天空率による緩和
  • 水面による緩和
  • 塔屋の緩和
  • 道路による緩和

など、緩和ルールにはさまざまな対象があるので、それぞれの具体例について知っておくと今後の建築に役立つことでしょう。

ここからは、斜線制限の緩和ルールについて7つのパターンをご紹介します。

高低差緩和

高低差緩和とは、道路や隣地が敷地の地盤面よりも1m以上低い場合に適用される緩和措置であり、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限に関係します。もしも道路や隣地よりも敷地の地盤面が低い場合、緩和が適用されなければ建築できる高さが低くなるためです。

具体的には、高低差から1を引いて2分の1にした数値分が緩和されます。仮に道路が敷地よりも1.5m低かった場合、

(1.5m-1)÷2

で0.25m分が緩和されることになります。

高低差緩和が適用されれば斜線の起点が高くなり、建物の高さの上限を引き上げることが可能です。

セットバックによる緩和

セットバックによる緩和は、建物に面した道路や隣地から敷地を後退(セットバック)させて建物を建てる際に適用されます。関係するのは、道路斜線制限や隣地斜線制限です。そして、セットバックの距離のぶんだけ斜線の起点を移動させることができるのが特徴です。

起点の位置を本来の位置から離すことで斜線がより高い位置となり、結果として本来の規定よりも建物の高さを高くすることができます。斜線制限により3階建ての建物が建てられなくても、セットバックにより建築可能となるケースは多々あります。

注意点は、セットバックした距離が外壁ではなく建物がもっとも出っ張っている部分で算出されることです。たとえば屋根の軒やバルコニーがある場合、思ったほど緩和されないこともあるでしょう。

セットバックによる緩和措置を受けたい場合は、軒高や面積の合計が特定の条件に該当するかあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

公園による緩和

公園による緩和は、建物に面した道路の反対側に公園がある場合に適用されるものであり、道路斜線制限に関係します。公園の反対側の境界線が、建物の反対側の境界線として扱われるのがポイントです。

公園といってもすべての公園に当てはまるわけではありません。緩和の対象となるのは、都市公園法に基づく公園・緑地、もしくは公共団体が所有・管理する公開広場です。

天空率による緩和

道路斜線制限や北側斜線制限に関係する天空率とは、魚眼レンズで空を見上げた際に円の面積に対して空が占める割合を示したものです。

仮に建築しようとしている建物が道路斜線に収まっていなくても、適合建築物よりも天空率が大きければ建築することができます

適用の条件として、測定ポイントを道路の幅の2分の1以下で等間隔に配置し、すべての観測ポイントにおいて建築しようとしている建物の天空率が適合建築物を超えていなければなりません。

さらに、幅が異なる道路が2面以上接している場合は道路ごとに領域を分けて天空率を算出する必要があります。

水面による緩和

公園と同じように、道路の反対側に水面がある場合は緩和措置を受けることができます

具体的には、幅員の2分の1だけ外側に境界線があるものとみなす緩和措置であり、道路斜線制限に関係するのがポイントです。

たとえば敷地の北隣が川だった場合、川の幅員の2分の1の場所に北側の隣地境界線があるとみなして、北側斜線を設定します。

話は変わりますが、水面だけでなく公園や広場に対する緩和措置も「水面による緩和」と呼ばれることがあります。

塔屋の緩和

マンションやビルの屋上にある塔屋(階段室、エレベーター機械室など)は、一定規模以下の場合において建築物の高さに算入しないことができます

具体的には、塔屋に対する建物の屋上部分の水泳投影面積の合計が建物面積の8分の1の場合、その部分の高さ12mまでは建物の高さに算入されません。

これは日影規制に関係する緩和措置ですが、北側斜線制限の規定などには緩和措置が適用されないので注意が必要です。

道路による緩和

建物の敷地において、複数の前面道路に面しているケースも多々見られますが、複数の道路の幅員に大小の相違がある場合は緩和措置の対象となります。具体的には、一定の範囲において小さい幅員の道路を大きい幅員の道路と同じ幅員とみなすことが可能です。

たとえば3つ以上の前面道路に接している敷地の場合、もっとも大きい幅員の道路以外においても、一定の範囲において小さい幅員の道路を大きい幅員の道路と同じ幅員とみなされます。これは北側斜線制限、日影規制に関係する緩和措置です。

このほかにも、敷地が都市計画道路や地区計画等の予定道路等に接している場合も、それらの計画道路等が前面道路とみなされる緩和措置もあります。

斜線制限に関するQ&A

斜線制限の中身は専門的かつ複雑なので、さまざまな疑問が生まれることもあるでしょう。最後は、斜線制限に関するよくある質問をまとめました。

隣地境界線にはどのような制限がありますか?

境界線付近の建築制限として、建物を建築する際は境界から50cm以上の距離を保つことが定められています。

もしもこの規定に反した場合は、隣地の所有者がその建築の中止、変更させることが可能です。

一方、地域によっては50cm以上離さなくても良いという地域も存在します。この場合は民法において“その慣習に従う”と示されていますが、双方の解釈が違うとトラブルに繋がる場合があるので注意しなくてはなりません。

商業地域では斜線制限は受けられない?

商業地域においても道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限がそれぞれ関係しますが、場合によって緩和されることもあれば、適用されないこともあります。

たとえば道路斜線制限の場合、幅の広い道路に面する場合や都市計画上で指定がある場合に、規制緩和の対象となる場合があります。

一方、商業地域においては隣地斜線制限や北側斜線制限の規制が適用されないケースが多いです。これらは商業活動の利便性を優先する観点から、高さ制限が緩和される場合があります。適用状況については各自治体の都市計画や建築基準法によるため、地域の担当者に確認することをおすすめします。

道路斜線制限の確認方法は?

道路斜線制限を確認するには、各自治体の役所にある道路台帳などで調べる方法や、現地へ出向き実際に調査する方法があります。この2つの方法を併用することが確実な確認方法と言えるでしょう。また、歩道においても道路のうちとなるため、幅員の計算に含められることとなります。

まとめ

斜線制限は周辺環境の保全を目的に設けられた規制であり、道路斜線制限や隣地斜線制限、北側斜線制限、日陰規制それぞれで対象となる用途地域が異なります。

なかでも道路斜線制限は、一般的な住居の建築でほぼ関わってくる規制なので、これから住居を建築する際は規制の範囲内で設計することが必要です。また、道路や隣地などの状況により規制が緩和されるルールもあります。

これから注文住宅を建てる際には、希望する土地にどのような斜線制限が関係するか事前に調べておくと安心できるでしょう。

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