よく木造住宅の耐用年数は22年だと言われます。これは、つまり木造住宅には22年しか住むことができないということなのでしょうか。
実際にはそのようなことはないと言えます。
そこで木造住宅の耐用年数22年という数字と、実際の木造住宅の寿命について紹介します。
木造住宅の寿命は30年?耐用年数と実際の寿命は違う
法定耐用年数とは、法律で定められた固定資産の減価償却期間のことです。
基本的に10万円以上の固定資産は一括で経費計上せず、減価償却により毎年少しずつ経費として計上します。その減価償却の期間が法定耐用年数です。
例えば、法定耐用年数が20年であれば、20年間にわたり経費を分割して計上します。
住宅の法定耐用年数はその構造や用途によって異なります。木造住宅は22年、木骨モルタル造は20年、鉄筋コンクリート造は47年、鉄骨造は19年〜34年です。
また、同じ木造でも、住宅は22年、店舗は20年、事務所は24年となっています。
このように、法定耐用年数は減価償却の期間を示すものであり、建物の実際の寿命とは異なります。法定耐用年数と建物の寿命は同じでないことを理解しておくことが大切です。
耐用年数を超えても住むことはできる?
法定耐用年数と建物の実際の寿命は異なるため、木造住宅に限らず、築年数が法定耐用年数を超えても住むことは可能です。
そのため、「木造住宅は築22年までしか住めない」や「鉄筋コンクリート造は47年を超えると住むのが難しくなる」「木骨モルタル造は20年を超えると取り壊さなければならない」といったことはありません。
実際に、築22年を超えた木造住宅に住んでいる人も多く、築47年を超えた鉄筋コンクリート造の住宅も数多く存在します。また、築50年〜60年以上の建物も市場でよく取引されているのです。
木造住宅の寿命はなぜ長い?
木造住宅の寿命は長いと言われています。例えば、法隆寺五重塔は約1300年の歴史を持ち、定期的なメンテナンスが行われているとはいえ、その長寿には驚かされます。
木造は優れた調湿機能を備えており、日本の気候に適応しやすいのが特徴です。また、強度が高く柔軟性もあるため、地震に対しても強いとされています。
さらに、現在の住宅はシロアリ対策や腐朽菌対策が施されており、制震ダンパーが設置されている住宅もあります。
国土交通省の「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」によると、期待耐用年数はフラット35基準で50年〜60年、劣化対策等級3で75年〜90年、長期優良住宅認定で100年以上です。
そのため、住宅によっては、しっかりと維持管理を行えば、100年以上使用することも可能とされています。
木造住宅の耐用年数は3種類ある
木造住宅の耐用年数は、実際には3種類あります。
それぞれを、比較してみましょう。
【国税庁が定めている】法定耐用年数
一般的に言われている22年という年数は、国税庁が定める法定耐用年数です。これは木造住宅を建てた場合22年間で固定資産税の減価償却を行うことになります。
例えば2200万円で木造住宅を建てた場合、1年間で100万円ずつ減価償却をしていき、22年経つと減価償却ができなくなるのです。
【建物が使用できなくなるまで】物理的耐用年数
物理的耐用年数は、建物が使用できなくなるまでの年数を指す数字です。これは建物の建てられた際の構造や建材、また周辺環境、被災などの外的要因によって変化してきます。
例えば新築の木造住宅でも震度7レベルの非常に大きな地震に遭えばすぐに、倒壊して住み続けることができなくなりますし木造住宅でも、メンテナンスをしながら40年50年と長期間住んでいる人もいます。
【市場価値がある期間】経済的耐用年数
経済的耐用年数は、その住宅が経済的にどの程度の期間価値を持つかという要素です。これは法定耐用年数に近い数字があります。
例えば、木造住宅を融資を受けて買う場合には法的耐用年数が残っていないとなかなか融資を受けることが難しくなってきます。
結果融資を受けにくい物件は経済的な価値も低くなり、経済的耐用年数に関しても経年によりどんどん短くなっていくのです。
ただしこちらも建築時の状況や建材によって変わってきますし、家の装飾なども評価される傾向にあります。お金をかけてかけて建てられた木造住宅であれば経済的耐用年数は長くなり、簡素な構造の木造住宅の経済的耐用年数は短いです。
木造住宅の耐用年数と耐久年数の違いは?
木造住宅の耐久年数とは、ハウスメーカーや工務店が独自に示す、建物が問題なく使用できるとされる期間のことです。減価償却期間を示す法定耐用年数とは異なります。
木造住宅 | 年数 | 誰が決めるか | どんな時に使用するか |
耐用年数 | 22年 | 国(法律) | 減価償却 |
耐久年数 | 50年〜100年程度※建物等で異なる | ハウスメーカー工務店 | 住宅販売時 |
また、耐用年数には、法定耐用年数以外に「経済的耐用年数」「期待耐用年数」「物理的耐用年数」の3つの種類があります。
・経済的耐用年数:流通耐用年数とも呼ばれ、建物の市場価値が維持される期間のことです。
・期待耐用年数:一般的なメンテナンスを考慮して、使用可能とされる期間のことです。
・物理的耐用年数:劣化などにより建物が使用できなくなるまでの期間のことです。
木造住宅の耐用年数はいつ使う?
実際に木造住宅の対応年数はどのようなシーンで活用されるのでしょうか。
その具体例をご説明します。
減価償却の計算を行うとき
木造住宅の法定耐用年数は、不動産の減価償却の計算を行うときに使用されます。
例えば1,100万円で建てられた木造住宅は、毎年50万円ずつ減価償却をすることができるので、不動産投資をしている場合は不動産の収入からその50万円を差し引くことが可能です。
不動産投資をする人にとってはこの減価償却の数字は経費に含まれるため、非常に重要となってきます。
そのため耐用年数が長い物件は投資対象として人気があります。
住宅ローンの審査に申し込むとき
住宅ローンの審査に申し込む時も、木造住宅の耐用年数はチェックされます。耐用年数が短い住宅は資産価値が低いとみなされる傾向にあり融資期間が長くなりにくいのです。
新築住宅を買うとき長期間の融資がつきやすく、中古住宅を購入する時の方が有識者が短くと考えればイメージはしやすいのではないでしょうか。
ただし建物が古くても土地の価値が下がりにくい物件であれば、長期間の融資を受けることは可能です。
売却時に査定を行うとき
不動産の売却時に査定を行う時も、木造住宅の耐用年数はチェックされます。
これは法定耐用年数の残存期間が長い物件は長期間の融資を受けやすいからです。
また一般的に新築に近い住宅の方が修繕箇所も少なく外観も綺麗で設備も整ってることが多いので、経済的価値が高くみなされる傾向にあります。
耐用年数を超える!木造住宅の寿命を延ばす方法
木造住宅で耐用年数を超える長期間使用を行うためには、どのような方法をとれば良いでしょうか。
それらをピックアップしてみました。
こまめに掃除をする
こまめに掃除をすることで汚れの蓄積を防ぐことができます。汚れの蓄積をなくすことで家の美観に対する意識を高く持ち、家の美観を保つことで資産価値を高めます。
定期的にプロにメンテナンスを依頼する
個人でできる掃除の範囲にはどうしても限界があります。蓄積された油汚れなどは専門的な洗剤や道具を使わないと取り除くことができません。
そこで例えば1年に1度などプロに掃除を頼むことで家を清潔にして、そして腐食などを防いで住み続けられます。
雨漏りや水漏れに注意する
木造住宅にとって一番の大敵は雨漏や水漏れです。湿度の高い家は木造部分の腐食だけではなく、シロアリの侵入による腐食も発生するからです。
そのため、通気性を保ち定期的な換気を行い家の中の湿度を下げておくことを心がけましょう。雨漏りが見つかったらすぐに修理をする、シロアリが増えないように薬剤の散布を行うといった対処を行います。
木造住宅の耐用年数や寿命を超えて住めなくなったらどうする?
木造住宅を22年を超えた住宅はまだまだ活用の余地があります。しかし長期間住んでいたりメンテナンス状態が悪いと住むことができなくなってしまうこともあります。
そんな住宅はどうしたら良いでしょうか。
リフォームして住み続ける
引っ越しをしたくない人は、木造住宅リフォームをして住み続けることが良いでしょう。家族の都合や通勤の都合などでなかなか引っ越すことが難しい人も多いため、そういった方にはメリットがあります。
ただしリフォームできる範囲にも限界がありますし、古い家は多額のリフォーム費用がかかってしまうというデメリットも忘れてはいけません。
中古住宅として売却する
引っ越しをしても良いという方は、木造住宅を中古住宅として売却する選択肢もあります。その場合引っ越すことができるので新しい環境での生活を始めることができます。
ただしデメリットとして、人によりなかなか引っ越しが難しい点があったり、売却には時間がかかるという点もデメリットです。そして住宅が古かったり立地が悪かったりすると、二束三文でしかお金が入らず、新しい家の購入資金の捻出が難しいこともあります。
リフォーム後に賃貸に出す
自分たちが進み続けるのではなく、リフォーム後に賃貸に出す選択肢もあります。
その場合家賃収入が入るので、その家賃収入を元に新しい住宅のローンを支払っていくことができます。
ただしリフォーム費用がかかりますし、賃貸需要のないエリアだと賃貸で借りてくれる人も見つからないこともあります。
誰しもが取れる選択肢ではないとも言えるでしょう。
木造2階建てだと年数は変わる?木造住宅の耐用年数に関するQ&A!
2階建てと平屋住宅、木造と鉄筋コンクリート造の耐用年数の違いなど、木造住宅の法定耐用年数に関する疑問を解消することは大切です。
ここでは、木造住宅の耐用年数に関するよくあるQ&Aについて見ていきましょう。
木造2階建てだと耐用年数は変わる?
木造2階建て住宅でも、法定耐用年数は変わりません。法定耐用年数は構造や用途によって定められており、平屋や2階建て、3階建て、二世帯住宅などの区分はありません。
そのため、木造住宅の場合、2階建てでも平屋でも法定耐用年数は22年となります。
2階建てにしても、法定耐用年数や減価償却期間が長くなるわけではないことを理解しておきましょう。
なお、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅についても同様です。
木造住宅と鉄筋コンクリート、軽量鉄骨造の耐用年数の違いは?
耐用年数は建物の構造によって異なるため、木造住宅、鉄筋コンクリート造、軽量鉄骨造ではそれぞれ耐用年数に違いがあります。
各構造の耐用年数は、以下のとおりです。
構造 | 法定耐用年数 |
木造住宅 | 22年 |
鉄筋コンクリート造(RC造)鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 |
軽量鉄骨造 | 骨格材の厚さが4mmを超える:34年骨格材の厚さが3mm超4mm以下:27年骨格材の厚さが3mm以下:19年 |
※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
※住宅用の場合
木造と鉄筋コンクリート造では、耐用年数に2倍以上の差があります。また、鉄骨造の耐用年数は、骨格材の厚さによって異なります。
すべて新築の場合、鉄筋コンクリート造や厚さ3mm以上の鉄骨造の住宅は、木造住宅よりも耐用年数が長いため、より長期間にわたり減価償却が可能です。
日本の住宅の寿命はなぜ短い?
日本の住宅寿命は、欧米など他国と比べて短いとされています。しかし、これは住宅の質に問題があるわけではなく、地形や自然条件が主な要因です。
日本周辺ではマグニチュード6以上の地震の約17.9%発生しており、地震大国とされています。また、台風が多く、湿度が高いことも影響しています。
しかし、耐震性や耐久性を向上させる技術が進歩しているため、適切なメンテナンスを行えば、住宅を長持ちさせることは可能です。
木造住宅の耐用年数や寿命を知って快適に暮らそう
木造住宅の耐用年数は住宅は22年、店舗は20年、事務所は24年と用途によって変わってきます。
こまめに掃除をしたり、定期的にプロにメンテナンスを依頼したりすることで寿命を延ばすことも可能です。
リフォームして住み続けることも、リフォームして賃貸に出すこともできるため、耐用年数が過ぎた場合は都合に合わせて活用するといいでしょう。
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