「孫に直接遺産を渡したい」
「子供がいる場合でも孫に遺産を渡せる?」
このような疑問をお持ちの方に、孫に遺産を相続する方法を解説します。孫に相続される割合や、遺留分まで解説するので、ぜひ参考にしてください。
孫が遺産を相続する方法はある?4つのケースを紹介
原則として、亡くなった方の配偶者と子供が法定相続人になることが普通で、孫に遺産が相続される機会はあまりありません。
しかし、孫が遺産を相続する方法としては、以下の4つのケースが挙げられます。
- 子供がいない場合に代襲相続が発生する
- 遺言書を作成してもらう
- 孫と養子縁組を組む
- 生前贈与をしてもらう
子供がいない場合に代襲相続が発生する
相続が発生した場合、まずは配偶者と子供が法定相続人となります。子供がいない場合に「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」が発生して、孫に相続の権利が渡る仕組みです。
代襲相続とは、本来相続されるはずだった人物が死亡していたり、相続放棄を選んだ場合にその子が相続人になる制度です。
遺産相続の優先順位 | 相続の対象者 |
相続確定 | 配偶者 |
第1順位 | 直系卑属(子供→孫→ひ孫の順番) |
第2順位 | 直系尊属(父母→祖父母→曾祖父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹→甥姪 |
遺言書を作成してもらう
上記で紹介した相続の優先順位は、遺言書がない場合に行う相続人の話し合い(遺産分割協議)で適用されます。しかし、亡くなった方が遺言書で「誰に・何を・どの程度」相続するか指定すれば、指定した人物に遺産が相続される仕組みです。この財産の譲渡方法を「遺贈(いぞう)」といいます。
事前に遺言書を作成してもらい、孫に相続する旨を記載してもらうことで、孫に遺産が相続されます。
遺言書に不備がある場合は、内容が無効になってしまうので注意しましょう。その場合は遺産分割協議を行うか、法定相続割合で相続手続をすることになり、被相続人の意思を反映させることはできなくなります。 |
孫と養子縁組を組む
孫と養子縁組を組むと、実子がいても第1順位の法定相続人となり一定の遺産を相続できます。遺言書を作成しなかった場合でも、亡くなった方の子供として遺産が相続される仕組みです。
【基礎控除の金額や相続税が変わるので注意】養子1人につき、600万円の基礎控除が認められますが、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか適用されません。人数に制限をかけないと不当な節税対策になってしまうからです。 また、孫と養子縁組をして遺産を相続させる場合、その孫の相続税が2割加算されるので注意しましょう。 |
生前贈与をしてもらう
孫に生前贈与すると、年間110万円まで贈与税を課税されずに財産を譲渡できます。110万円を超える金額を送る場合は、数年をかけて送る必要がありますが、節税しながら財産を譲渡できる制度です。
ただし、生前贈与は被相続人が存命でないと不可能なので注意しましょう。
遺留分侵害額請求に注意
例え、遺言書を作成し孫だけに全財産を相続することにしても、遺贈、生前贈与、死因贈与は遺留分侵害額請求の対象になります。遺留分とは最低限保証される遺産の取り分のことで、基本的には法定相続分の2分の1、直系尊属(親など)しか相続人がいない場合は3分の1が遺留分割合となります。遺言書を作成したり生前贈与したとしても遺留分侵害額の請求をされた場合は遺留分はわけないといけません。
遺産相続以外で孫に財産を渡す方法はある?
ここからは、遺産相続以外に孫へ財産を渡す方法を解説します。
- 生命保険の受取人を孫にする
- 教育資金の一括贈与の特例
- 結婚・子育て資金の一括贈与の特例
生命保険の受取人を孫にする
生命保険のお金は、受取人固有の財産になります。遺産分割の対象にならないので、死亡保険金の受取人を孫に指定しておくと、孫に絞って相続させられるのが特徴です。
ただし、死亡時に相続税を計算する際、「みなし相続財産」という課税対象となるため、孫に相続税の支払い義務が発生する点に注意しましょう。
教育資金の一括贈与の特例
2026年3月31日までの期限付きですが、30歳未満の子供や孫に教育資金を贈与する場合は、最大1,500万円まで学校の授業料などの教育の名目で非課税で贈与ができます。
金融機関に孫名義の口座を作って振り込みすると、孫が窓口でお金を受け取れるようになります。
結婚・子育て資金の一括贈与の特例
2025年3月31日までの期限付きですが、18歳以上50歳未満の孫(子供に)結婚、子育てを目的とした資金を贈与する場合に最大1,000万円まで非課税で譲渡できます。
「教育資金の一括贈与の特例」と同じく、口座を開設して孫がお金を引き出す形式です。
孫に相続される遺産の割合はどれくらい?
亡くなった方の子供も死去していた場合は、孫が相続人となります。一体どのくらい遺産が相続されるのでしょうか?パターン別に解説していきます。
配偶者1人、子供0、孫1人の場合は1/2ずつ
亡くなった方の配偶者と孫がいる場合は、1/2ずつ相続されます。4,000万円の遺産があれば配偶者と孫に2,000万円ずつ相続される計算です。
孫が複数いる場合は孫同士で1/2の遺産を分ける
孫が複数いる場合は、配偶者に1/2、孫に1/2の遺産が渡り、孫同士で分配することになります。
4,000万円の遺産を配偶者と孫2人で分ける場合は、配偶者に2,000万円、孫1人当たり1,000万円の遺産が相続される計算です。
孫だけの場合は100%相続することになる
亡くなった方に配偶者と子供がいない場合は、孫が100%遺産を相続することになります。ただし、孫が複数人いる場合は、100%の財産を人数で等分することになります。
孫に遺産を相続する際の注意点
ここでは、孫に遺産を相続する際の注意点を解説します。遺産相続の際に損をしないように注意しましょう。
孫の相続税が20%上乗せされる可能性がある
亡くなった方の子供が亡くなって、代襲相続で孫に相続の権利が回ってくる分には子供と同じだけの相続割合・相続税が適用されます。しかし、それ以外の方法で遺産を相続する場合、相続税が20%加算されます。
相続税が合計でどの程度かかるのか不安な方は、相続の専門家に相談するのがおすすめです。
親族との関係性が悪化する可能性がある
亡くなった方に子供がいる場合でも、遺言書で指定すれば孫に直接遺産を渡せます。しかし、本来子供がもらえるはずだった遺産が孫に相続されると、親族間のトラブルが発生する可能性があります。
亡くなった方の子供、親、祖父母など第2順位までは、遺留分という権利を持っており、遺言書の内容に不満があれば、一定の割合の遺産を相続できる制度があります。
相続人に関するよくある質問
ここでは相続人に関するよくある質問と回答をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
孫に相続の権利はある?
そもそも孫に相続の権利はあるのか気になる方は多いのではないでしょうか?結論からいうと子供が死亡していない限りは、孫に権利がありません。子供が亡くなると、相続の権利が代襲相続で孫に渡る仕組みです。
孫が未成年の場合も相続人になる?
相続人は年齢に関わらず相続人になりえます。孫が0歳児だったとしても、亡くなった方に子供がいなければ相続人として扱われます。
未成年の相続人の存在を無視して、亡くなった方の親や兄弟だけで相続の手続きを行うと、遺産分割が有効に成立していないことになるので注意しましょう。
相続人だが財産を相続できない場合がある?
自分より高位の相続人を殺害しようとするなど、重大な非行を行った場合や、遺言書で遺産の相続相手を指定された場合は、相続できない可能性があります。
ただし、遺言書の内容に納得できない場合は、第2順位までの方であれば「遺留分侵害額請求」によって、一定の遺産を相続できます。
トラブルを避けるためにはどうすれば良い?
「孫に遺産を相続したいが、トラブルを避けるためにはどうすれば良いのだろう?」と思う方は少なくないでしょう。ここでは祖父母がトラブルなく遺産を相続するポイントを解説します。
他の相続人に話を通す
孫に遺産を相続する上で、最も重要なのが他の遺族の意向です。遺言書に「遺産は孫へ相続する」と書かれていても、他の相続人が納得できなければ「遺留分侵害額請求権」を行使して、一定の財産を取り戻せます。
孫を相続人にする/養子にする場合は、他の相続人と話し合い、納得できる形で相続をしましょう。
相続税のシミュレーションをしておく
代襲相続以外の方法で、孫が相続人になった場合、相続税が20%加算されてしまいます。通常の遺産総額より受け取れる金額が低くなるので注意しましょう。相続税の計算式は、以下の通りです。
課税遺産総額=遺産総額-基礎控除額(3,600万円〜) 遺産総額=財産の総額-非課税財産-(葬儀費用+債務)+相続開始前、最長7年以内に贈与された財産の価格 基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の数×600万円) |
複雑な計算式なので、計算が合っているかわからない、計算方法がよくわからない場合は、相続の専門家に相談するのがおすすめです。
なお、取得金額によって税率が異なります。
まとめ:孫に遺産を相続するには遺言書か養子縁組で対応しよう
亡くなった方に子供がいる場合は、子供に遺産が相続されるので、孫に相続はできません。子供がいない場合は代襲相続によって孫に財産相続の権利が回ってきます。
ただし、遺言書で「孫に〇〇%の遺産を相続する」と記載しておいたり、養子縁組を組むことで遺産を孫に相続できます。代襲相続以外の方法で孫に遺産を相続すると、相続税が20%加算されるので注意しましょう。
また、子供がいるのに孫を相続人に指定すると、トラブルの原因になる可能性があるので、前もって他の相続人に話を通しておきましょう。
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