アスベスト調査とは?リフォームや解体時に必要
一定規模の建物をリフォームや解体する際には、アスベスト調査が必要です。これは、アスベストを含む建材が使用されている場合、リフォームや解体時および居住中にアスベストが飛散して健康被害を引き起こすリスクがあるためです。
アスベストの製造・使用は平成18年から禁止されており、令和4年からは事前調査および報告が義務化されています。
ここでは、アスベスト調査の概要について説明します。
アスベスト調査の必要性
アスベスト(石綿)は、繊維状鉱物であり、多くの建物に使用されてきました。不燃性、耐久性等が優れているからです。
しかし、アスベストを含む建材が劣化すると、石綿繊維が空気中に飛散し、大量に吸入すると肺がんや石綿肺、胸膜プラーク、中皮腫などの健康被害を引き起こすリスクがあります。そのため、平成18年からアスベストの製造・使用が禁止されています。
ただし、アスベストを使用した建物のリフォームや解体時にアスベストが飛散する問題が依然として存在しています。これにより、アスベスト調査の必要性が高まり、法律で義務化されました。
アスベスト調査の概要
アスベスト調査では、特定建築材料が建物に使用されていないかを確認します。特定建築材料には、次のようなものがあります。
・吹付け石(石綿含有パーライト吹付け材など)
・石綿を含む断熱材(屋根用折板裏断熱材など)
・石綿を含む保温材(石綿含有水練り保温材など)
・石綿を含む耐火被覆材(石綿含有けい酸カルシウム板第2種など)
・石綿を含む仕上塗材(石綿含有建築用仕上塗材など)
また、調査方法には、書面調査、目視調査(現地調査)、分析調査などがあります。
書面調査 | 設計図書などを参考にして、アスベストを含む可能性がある建材が存在するかどうかを確認します。 |
目視調査(現地調査) | 書面と実物が異なる場合があるため、現場で実際にアスベストが使用されていないかを調査します。 |
分析調査 | 書面調査や目視調査でアスベストの有無が判断できない建材については、必要に応じて定性分析や定量分析を行います。 |
このような調査を行い、アスベストの有無を報告します。
アスベスト調査は2022年に義務化!義務化の対象は?
大気汚染防止法や石綿障害予防規則の改正により、令和4年4月から一定規模以上の建築物をリフォームや解体する場合、アスベストの事前調査および結果の報告が義務化されています。
調査および報告の義務対象は、以下のとおりです。
①建築物を解体する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上であるもの
②建築物を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の請負代金の合計額※2が100万円以上であるもの
③工作物※3を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事※1であって、当該作業の請負代金の合計額が100万円以上であるもの
引用元:環境省
上記のとおり、床面積が80㎡以上の場合や、リフォームや解体工事の請負代金が100万円以上の場合には、アスベストの事前調査と報告が必要です。
アスベスト調査が不要な場合は?築年数で変わる?
アスベスト調査が不要な場合は、以下のようなケースです。
・明らかにアスベストが含まれていない素材で構成されている場合
・極めて軽微な損傷しか与えない作業の場合
・材料の追加のみで終わる作業の場合
ガラスや石、木材など、アスベストが含まれていないことが明らかな素材で構成されている建材については、調査は不要とされています。
また、「釘を抜く」といった軽微な損傷しか建材に与えない場合や、新たに材料を追加したり、上から塗装するだけの場合も調査は必要ありません。
ただし、「塗装を剥がす」「電動工具で壁に穴を開ける」など、アスベストが飛散するリスクが少しでもある場合は、調査が必要です。
なお、アスベストの使用や製造が禁止された平成18年以降に建てられた建物については、実地調査は不要ですが、書面調査と報告は必要です。
アスベスト調査にかかる費用!費用を抑えるポイントも
アスベストの調査費用は、一般的に7万円〜14万円程度です。ただし、建物の状態や業者によっては、さらに費用がかかることがあります。
調査費用は決して少額ではないため、事前に資金計画を立て、できるだけ費用を抑えることが大切です。
ここでは、アスベスト調査の費用相場、支払者、費用を抑えるための3つのポイントについて見ていきましょう。
調査内容別!アスベスト調査にかかる費用
アスベスト調査にかかる費用相場は、以下のとおりです。
・図面調査:2万円〜3万円程度
・目視調査:2万円〜5万円程度
・分析調査:1検体あたり3万円〜6万円程度
上記のとおり、アスベスト調査にかかる費用は7万円〜14万円程度です。
ただし、分析方法などによって費用が変わる可能性があります。また、報告書作成などにも追加費用がかかる場合があり、さらに高額になることもあります。
アスベスト調査の費用は誰が払うの?
アスベストの調査費用を負担するのは、リフォームや解体を行う建物の所有者であることが一般的です。ただし、建物を貸し出している場合や所有者が複数いる場合など、状況によっては調査費用を支払うのが所有者以外の人になることもあります。そのため、誰が調査費用を負担するのか、事前に確認しておくことが大切です。
アスベスト調査の費用を抑えるポイント
アスベストの調査費用を抑えるためのポイントは、以下のとおりです。
・複数の業者から見積もりを取得する
・信頼できる業者に依頼する
・補助金を活用する
業者によって調査費用が異なるため、複数の業者から見積もりを取得し、比較することで、割安な業者を選ぶことができます。また、実績が豊富で信頼できる業者は、適正価格や割安な価格で調査を提供している可能性が高いです。
さらに、「石綿総合情報ポータルサイト」など補助金を活用することで、費用負担を軽減することが可能です。自治体の補助制度も確認してみましょう。
アスベスト調査は誰がやるの?資格は必要?
アスベスト調査を行う人は、以下のとおりです。
令和5年10月1日着工の工事から、建築物の解体等の作業を行うときは、「建築物石綿含有建材調査者」、又は令和5年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者による事前調査を行う必要があります。
引用元:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」
上記のとおり、建築物石綿含有建材調査者または日本アスベスト調査診断協会の登録者が調査を行います。
建築物石綿含有建材調査者とは、建築物石綿含有建材調査者講習を受講・修了した人に与えられる資格です。この資格には、「一般建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者」「特定建築物石綿含有建材調査者」の3種類があります。
建築物石綿含有建材調査者の資格の取り方
建築物石綿含有建材調査者の資格を取得するには、建築物石綿含有建材調査者講習を受講して修了する必要があります。
また、建築物石綿含有建材調査者講習を受講するには「建築関係の大学を卒業後、実務経験2年以上」など、建築関係の学校を卒業するなどして、一定期間の実務経験を積むことが必要です。詳しくは、建築物石綿含有建材調査者講習の募集要項をご確認ください。
アスベスト診断士もアスベスト調査が可能
一般社団法人JATI協会のアスベスト診断士養成研修講座を受講・修了すると、アスベスト診断士の資格が与えられます。この資格を取得し、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会へ入会すると、事前調査を行えるようになります。
ただし、アスベスト診断士養成研修講座を受講するには、石綿作業主任者や作業環境測定士(第1種)などの資格保有者、または実務経験者である必要があるため注意が必要です。
アスベスト調査の一部で資格が不要な場合も
建物の着工日の確認だけで事前調査(書面調査)が完了する場合に関しては、資格は不要です。この場合、石綿含有建材調査者などの資格がなくても対応が可能です。
アスベスト調査の流れ!事前調査から報告書類作成まで
出典:大田区「令和5年10月1日から、有資格者による石綿事前調査が義務付けられます」
アスベストの事前調査は、図面調査(書面調査)、目視調査(現地調査)、分析調査の3つです。
図面調査
まずは、図面調査(書面調査)を行います。設計図、竣工図、改修図などを確認し、アスベストが含まれる建材がないかを調べます。ただし、書面だけでは判断が難しい場合もあるため、その際は目視調査(現地調査)が必要です。
建物の着工日が平成18年9月1日以降の場合は、アスベスト無しと判断されます。
目視調査
図面調査で判断が難しい場合には、目視調査(現地調査)を行います。特に古い建物では図面と一致しないことが多いため、実際に建物の内外を詳しくチェックし、アスベストが含まれる建材がないかを確認します。
分析調査
目視調査(現地調査)で判断が難しい場合には、アスベストが含まれる可能性のある建材を持ち帰り、定性分析と定量分析を行います。定性分析ではアスベストの有無を確認し、定量分析ではアスベストの含有量を調査します。
これらの調査を行い、アスベストの有無が判明したら、分析結果を含めた報告書を作成して提出します。
【Q&A】アスベスト調査に関する疑問を解決
アスベスト調査は必須とも言える業務です。
一方で専門的な知識が必要であり、様々な疑問を持つ方が多いのも現実です。そこでアスベスト調査で頻発する疑問をピックアップしました。
アスベスト調査は外注できる?
アスベスト調査は作業自体は請負事業者に委託できます。そもそもアスベスト調査は有資格者でないと行うことができず、社内にその有資格者がいる会社は少ないでしょう。
ただし行政への報告は外注できません。調査結果を業者からもらった後は自社で書類を作成し、行政に提出します。
アスベスト調査報告書の提出期限は?
アスベスト調査報告書の提出期限は解体工事の14日前が期限です。
提出に遅れの無いようにしっかりとスケジュールを組みましょう。
アスベスト調査の報告はオンラインでもできる?
アスベスト調査のオンライン報告は可能です。原則としてオンラインで行います。
報告用サイトはこちらです。
https://www.ishiwata-houkoku.mhlw.go.jp/shinsei/
このシステムの利用にはIDを設定する必要があります。
アスベスト調査に関して補助金制度はありますか?
自治体によりアスベスト調査に補助金を支給している場所もあります。
例えば川崎市の場合、こちらに詳細が記載されています。
https://www.city.kawasaki.jp/shisei/category/54-11-2-5-1-0-0-0-0-0.html
アスベスト調査を行う建物がある自治体に相談してみるとよいでしょう。
アスベストが含まれていると不動産の価値は下がりますか
アスベストが建物の建材に含まれている場合、不動産取引では、宅地建物取引業上報告の義務が発生します。
そのためアスベスト含有建材を使用している場合、不動産売買に置いては除去費用を差し引いての売買になることが一般的です。
不動産の価値が1,000万円、除去費用として50万円かかる場合、売買価格の相場は950万円です。不動産売買の計画がある場合は早めにアスベストの調査を行い売買価格を把握しておきましょう。
事前調査の流れやポイントを知って正しいアスベスト調査を行おう
人体に有害な影響を及ぼす可能性のあるアスベストは、平成18年から建材への利用が禁止されています。また2022年から、一定以上の規模を持つ建物においてもアスベスト調査が義務化されており、建物の解体工事を行う際には14日まで前に報告する義務があります。
アスベスト調査の費用は10万円から20万円ほどが相場であり、決して高いものではないため平成18年以前に建てられた建物を売買したり解体する場合には、期日に合わせられるように早めの調査を心がけましょう。
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