準防火地域の耐火建築物の建ぺい率は10%緩和!メリットや条件をチェック

準防火地域で耐火建築物を建てる際、建ぺい率が10%緩和されることをご存知ですか?

本来、準防火地域はその他の地域よりも厳しい耐火基準が適用されますが、2019年5月からは建ぺい率が10%緩和される特例が適用されるようになりました。限られた土地を有効活用し、快適かつ安全な住まいや商業空間を実現するにはどのようなポイントを抑えておくとよいのでしょうか。

本記事では、準防火地域の耐火建築物の建ぺい率緩和措置にともなうメリットや条件などをくわしく解説します。

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率は2019年5月に10%緩和

防火地域内の耐火建築物については、従来より建ぺい率が10%緩和される規定が設けられていましたが、2019年5月からは準防火地域内の耐火建築物・準耐火建築物についても建ぺい率緩和の対象となりました

国交省の資料によると、これまでに「危険な密集市街地は、防火地域に約1割、準防火地域に約8割存在」することがわかっています。建ぺい率を10%緩和することは、延焼防止性能の高い建築物への建て替えなどを促進する狙いがあります。

具体的には「準防火地域に対して耐火建築物・準耐火建築物およびこれらと同等以上の延焼防止性能を有する建築物」が建ぺい率の緩和対象です。

さらに従来より建ぺい率の緩和対象であった防火地域内の耐火建築物においても「耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物」が追記されるようになりました。

準防火地域の耐火建築物とは何か再確認しよう

準防火地域は、火災に対する一定の安全性が求められている地域のことです。火災が発生した際、延焼を防ぐために建物の構造に一定の基準が設けられています。とはいえ、防火地域ほどの厳しい規制がないのも特徴です。

ここで、準防火地域と防火地域の違いについて解説します。

準防火地域と防火地域の違い

準防火地域と防火地域の大きな違いは、耐火建築物の規定についてです。

耐火建築物は、屋内からの火災やその周りで発生した火災に対し、火災が終わるまでの間倒壊するほどの変形や損傷がなく、延焼もせずに耐えることができる建築物をいいます。

耐火建築物の規定の違い

防火地域では地階も含む階数が3つ以上、または延床面積が100㎡超えの建物を耐火建築物にすることが必要ですが、準防火地域では地上4階建て以上、または延床面積が1,500㎡超えの耐火建築物を建てなければならない規定が存在します。

ちなみに準防火地域では、2階建て以下かつ延床面積が500㎡以下の建物であれば、延焼ラインの部分に防火設備を設けるなどの要件を満たすことで木造を建てることが可能です。

指定範囲の違い

準防火地域に指定される地域は、防火地域の周辺にあることが多く、防火地域に比べ範囲が広くなっています。

対する防火地域は、高層ビルが立ち並ぶような中心市街地に指定されることが多いです。住宅地というよりも、ターミナル駅周辺の商業地に指定されるイメージが強いでしょう。

ちなみに準防火地域は、防火地域を取り囲むように指定されることから、中心市街地に比較的近い場所に指定されることが多いです。

準防火地域の調べ方について

準防火地域は、市区町村役場の都市計画課や街づくり課といった名称の部署で確認することができます。課の名称は各市区町村役場によって異なるので、まずは役所の総合案内で「準防火地域について調べたい」旨を伝えると案内してもらうことができるでしょう。

行政によっては、インターネットで準防火地域の情報を確認できる場合があります。

東京都なら「都市計画情報等インターネット提供サービス」、横浜市なら「マッピー」というサービスにアクセスすることで確認可能です。

そもそも建ぺい率ってなに?

建ぺい率とは、敷地面積に対して建物が建てられる面積の割合を指したものです。

建ぺい率は「建ぺい率=建築面積÷敷地面積×100」で表すことができます。

引用元:panasonic homes

たとえば敷地面積が100㎡で建ぺい率が60%の場合、その土地に建てられる建物の建築面積(1階部分)は最大60㎡まで、ということになります。

ちなみに建築面積は、建物が実際に地面を覆っている部分の面積を指しており、建物の1階部分の水平投影面積となるのがポイントです。

建築時に建ぺい率が制限されるのは、以下の理由が挙げられます。

  • 防災性の確保
  • 日照や風通しの確保
  • 都市景観の保全

火災が発生した場合の延焼リスクを減らすためには、一定以上の間隔を確保することが必要です。建ぺい率を制限することで、火災が周囲の建物に広がるのを防ぎやすくすることができます。

このほかにも、建物の密集を防ぐことで採光や通風を確保することや、調和の取れた街並みを維持することも建ぺい率が制限される理由です。

建ぺい率は、用途地域ごとに30〜80%の範囲で指定されます。

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率が緩和される条件

建物の建築予定地が防火地域、もしくは準防火地域に指定されている場合、建築する建物が耐火建築物・準耐火建築物なら建ぺい率の緩和を受けることができます

そして建築予定地が防火地域、また準防火地域にまたがり、土地の一部分だけが防火地域や準防火地域に入っている場合も、防火地域内にある敷地とみなされます。従来の規定通りに耐火建築物や準耐火建築物を建築すれば、指定の建ぺい率を10%緩和可能です。

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率が緩和されることによるメリット

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率が緩和されると、次のようなメリットが生まれます。

  • 敷地が有効活用できる
  • 床面積が増やせるようになる
  • 都市全体の防火性能が高まる

建ぺい率が緩和されることでより多くの面積に建物を建てることができるため、敷地全体を有効活用することができます。なかでも商業用の建物や集合住宅など、敷地を最大限に利用したい場合に有利と言えるでしょう。

また敷地の広さに対して建てられる建物の規模が大きくなるため、住居や商業施設の増床が可能です。これにより利便性や収益性のアップが期待できます。

さらに、耐火建築物そのものが火災のリスクを低減する建物です。建ぺい率が緩和されれば、より多くの耐火建築物が建てられるようになるため、都市全体の防火性能がアップすることになります。

準防火地域の角地の耐火建築物建ぺい率も緩和される?

準防火地域において、敷地が「特定行政庁が指定する角地」にある場合でも建ぺい率10%緩和の対象となります。

一方、一般的に2面以上が道路に面している状態の土地のことをいいますが、角地の定義は各自治体によって異なります。角地の建ぺい率緩和の条件については、敷地のある自治体に確認しましょう。

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率に関する疑問を調査

準防火地域の耐火建築物が建ぺい率の緩和対象になったとはいえ、その要件は複雑でありわかりにくいのも事実です。ここで、準防火地域の耐火建築物の建ぺい率に関するよくある疑問、そしてその回答についてピックアップしてご紹介します。

準防火地域は建物にどのような制限がかかる?

本記事の「準防火地域と防火地域の違い」でも紹介していますが、原則は「地上4階建て以上、または延床面積が1,500平米超え」の建物に対し、耐火建築物等にする必要があります

また地階を除く階数が3、または延床面積500平米以上1500平米以下の建築物に関しても、耐火建築物もしくは準耐火建築物等にする必要があります。

準防火地域で平屋は建てられる?

延床面積500平米以下の平屋であれば、外壁や軒裏、開口部などに一定の防火措置を取り入れることで建築することが可能です。

準防火地域は、制限によって希望通りの間取りや構造にできない可能性もあります。準防火地域に建物を建てる際は、事前に条件を確認しておきましょう。

準防火地域で木造3階建ては建てられる?

耐火建築物であれば可能です。防火地域以外は、避難経路の確保など一定の措置を講じたうえで、木造3階建て共同仕様(木3共)仕様であれば1時間順耐火建築物で建築することができます。

とはいえ、耐火構造にする以外にも建築基準法の適用や、外壁や屋根に防火性能を持つ材料を取り入れるなどの条件を満たす必要があるので、専門家に相談の上建築計画を建てることをおすすめします。

準防火建築物は何分耐火構造?

木材を石膏ボードなどの延焼しにくい素材で覆う、また燃えしろ設計を用いるなどで、建物の柱・床・梁・耐力壁などに45分の防火性能をもたせた場合は「45分準耐火建築物」に、30分なら「30分準耐火建築物」となります。

45分準耐火建築物は防火地域内の2階建て木造住宅、また準防火地域の3階建ての建物に要求されることが多いです。

一方、屋根や階段などの部分的な箇所については条件が緩和されているので、仮に45分の準耐火建築物が要求されていても、30分の防火性能で良いことになっています。

準防火地域に家を建てる費用は?

準耐火地域に家を建てる場合、坪単価は90〜120万円が目安となります。準耐火地域に該当しない地域と比べると、約1.2倍〜1.6倍ほどかかるイメージです。

準防火地域での建築で屋根や外壁、軒裏などに不燃材を使用したり、防火ドアや防火窓を設置したりなどすれば当然費用は高くなりますが、建物やその周辺の安全性は高まります。

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率を知って建築計画を立てよう

準防火地域の耐火建築物の建ぺい率が緩和されたことで、敷地内をより有効活用できたり、街全体の防火性能がアップしたりとさまざまなメリットが生まれました。

今後土地を活用したい人や家を建てたい人にとって、火災に強く火災の被害を最小限に抑えられる土地で暮らせるのは、何より魅力的なことです。

これから建築計画を立てる場合は、敷地が準耐火地域に該当しているかどうか、また設定されている建ぺい率を自治体に確認しましょう。

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