相続登記の完全ガイド|手続きから義務化までの詳細解説

相続には多くの法的手続きが伴います。

特に「相続登記」は不動産の所有者が亡くなった場合に不動産の名義を相続人に変更する手続きで、相続人を明確にするためにも必要不可欠な手順です。

2024年4月からは相続登記の義務化がスタートし、さらにその重要性がさらに増しています。

この記事では相続登記の基本から義務化によって変わる事項を徹底解説します。

参考|法務省 相続登記の申請義務化について

相続登記とは?

相続登記とは不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の見え技を亡くなった人から相続人に変更する手続きのことです。

2024年4月1日から義務化され、不動産を相続した場合には相続を知った時から3年以内に相続登記を申請することが定められています。

参考|法務省 不動産を相続した方へ

相続登記の基本的な流れ

相続登記の基本的な流れは次のとおりです。

  1. 相続する不動産を確認する
  2. 遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める
  3. 相続登記に必要な書類を収集、作成する
  4. 管轄の法務局に申請する
  5. 相続税の申告・納付(基礎控除額を超える場合)
  6. 登記の完了を確認する


相続登記は、故人の財産を相続する際に必要な手続きで、遺言書の有無によって流れが異なります。遺言書が存在する場合、その指示に従って財産が引き継がれます。一方、遺言書がない場合、相続人は法律に基づく相続または遺産分割協議を通じて財産を分け合います。遺産分割協議では、相続人全員が集まり、どの財産を誰がどれくらい受け取るかについて話し合います。

法務局に必要な書類を提出してから、相続登記が完了するまでの期間は通常1~2週間程度です。しかし、提出された書類に不備がある場合は、手続きがさらに延長される可能性があります。

相続登記が必要な理由

不動産の相続登記を行うべき主な3つの理由は以下の通りです:

  1. 売却ができるようになる:
    • 相続登記を行わないと、その不動産を売却することができません。法律上、相続登記がされていない不動産は、その所有権が証明されていないため、売却することが認められていません。
  2. 将来の相続トラブルを防ぐ:
    • 相続登記をしていない状態で相続人が亡くなると、その後の相続で親族間でのトラブルが発生する可能性があります。相続人が増えることで、遺産分割が複雑になり、手続きが困難になる恐れがあります。
  3. 融資を受けやすくなる:
    • 不動産を担保にした融資を受けたい場合、相続登記が完了していないと融資の手続きが進みません。不動産の名義人が融資を受ける本人であることが必要であり、相続登記を済ませておくことでスムーズに融資を受けることが可能になります。

現時点で問題がなくても、将来的にトラブルや不都合が生じることを防ぐため、時間に余裕があるうちに相続登記を済ませておくことが重要です。

相続登記の種類と特徴

相続登記には、単独名義の不動産を相続する「単純相続登記」と、共有名義の不動産を相続する「共有相続登記」があります。

単純相続登記は、1人の相続人が不動産を引き継ぐ場合に行われ手続きが比較的簡潔です。

一方、共有相続登記は複数人で不動産を相続する際に必要となり所有権の持分を明確にして登記する必要があります。

相続登記に必要な書類一覧


相続登記に必要な書類をわかりやすくまとめた一覧です。これらの書類は遺産分割協議を行った場合に必要となります。

必要書類概要入手先
登記申請書不動産登記を申請するための書類。相続人、不動産の詳細、課税価格等を記入。法務局のウェブサイト
遺産分割協議書相続人全員の協議結果を記載した書類。相続する不動産の詳細と、それを誰が受け取るかを記入。自作(相続人全員で作成)
戸籍謄本被相続人の生涯の戸籍と、相続人の現在の戸籍。誰が相続人になるかを証明。市区町村役場や窓口
住民票被相続人の除票と相続人の住民票。住所と家族構成を証明。市区町村役場や窓口
印鑑証明書遺産分割協議書に押印した印鑑が実印であることを証明。相続人全員分が必要。市区町村役場や窓口
固定資産税納税通知書相続する不動産の評価額を証明。登録免許税計算の基礎資料。市区町村役場の税務課等
相続関係説明図亡くなった人と相続人の続柄を示す図。家系図に似ている。自作
収入印紙登録免許税の納付に必要。額面に応じて購入。郵便局や法務局
登録免許税印紙納付台紙収入印紙を貼り付ける台紙。法務局

書類の作成や収集には時間と注意が必要です。特に固定資産税納税通知書や登記簿謄本は事前に取得しておく必要があります。また、登記申請書の記入には、不動産の詳細(所在地、地番など)や相続人の情報、不動産の課税価格等の正確なデータが求められるため事前の準備が大切です。

相続登記は自分でできる?メリットとデメリット

相続登記は自分で行うことも可能です。

メリット

  • コスト削減: 自分で行うと、司法書士など専門家に依頼する場合に比べて費用を大幅に節約できます。専門家への支払いが不要になり、戸籍取得や相続登記に必要な税金などの実費のみで済みます。

デメリット

  • 手間と時間の負担: 相続人の特定、遺産の調査、必要書類の集めなど、手続きにはかなりの時間と手間がかかります。
  • ミスのリスク: 書類の記入漏れや間違いなど、手続き上のミスが発生するリスクがあります。不備があると書類を再提出する必要が生じ、手続きがさらに長引くことも。
  • 権利関係の複雑化: 不動産を相続登記せずに放置すると、将来的に権利関係が複雑化し、多くの相続人の同意が必要になる場合があります。

相続登記を自分で行うことは、費用を節約できる一方で、時間や手間、手続きの正確さに関して大きな負担がかかるという点を理解しておくことが重要です。

相続登記を司法書士に依頼するメリット・デメリット

相続登記を司法書士に依頼する場合のメリットとデメリットをまとめました。

メリット

  • 専門家による迅速かつ正確な手続き: 司法書士は相続登記のプロフェッショナルであるため、手続きのミスや不備を避け、スムーズに相続登記を完了させることができます。また、法務や税務に関する知識も豊富で、相続人間のトラブルを防ぐアドバイスも期待できます。
  • 時間と手間の節約: 自分で相続登記を行う場合に比べ、手続きにかかる時間や手間を大幅に削減できます。これにより、他の重要な事務や個人的な時間に集中できます。
  • 専門的な知見の活用: 税務リスクの最小化や、法務上の隠れたメリットを活用することができるため、結果的に経済的な利益を享受できる可能性があります。

デメリット

  • コスト: 唯一のデメリットとして、司法書士への報酬が別途必要になります。これは、自分で行う場合の実費に比べて、相続登記のための総費用を高くする可能性があります。

相続登記を司法書士に依頼することの最大のメリットは、手続きの正確さと迅速さ、さらには専門的なリスク管理を行うことができる点にあります。一方で、デメリットは追加費用の発生のみです。したがって、時間や手間を節約し、複雑な法務・税務リスクを避けたい場合には、司法書士への依頼が適しています。

相続登記義務化の背景

相続登記義務化は不動産の所有状況の透明性を高め、法律上のトラブルを防ぐための法律改正により導入されました。

相続が発生した際に不動産の名義変更を義務付けることで、放置されたままの不動産が増える問題や相続人間での権利関係のもつれを未然に防ぐために義務化されました。

所有者不明のの土地は公共事業や民間取引の妨げになっているだけでなく、災害普及工事の際にも工事が進まない原因ともなります。高齢化社会の加速により所有者不明の土地が増え続けているとも言われています。

所有者不明の土地が増える理由

理由説明
相続登記の非義務化相続発生時に土地の登記を更新することが法的に義務付けられていない。
費用の負担登録免許税や司法書士、弁護士への報酬など、相続登記には数万円の費用がかかる。
手続きの複雑さ相続人全員の同意が必要であり、手続きが面倒。
土地の価値認識低価値と見なされる土地や田畑は、登記更新が見送られがち。

所有者不明土地の問題点

所有者不明の土地には下記のような問題点があります。

土地活用の困難性

  1. 売買の不可:
    • 所有者が不明なため、土地の売買取引が法的に成立しない。これにより、土地の市場価値を活かすことができなくなる。
  2. 公共事業や民間事業での利用制限:
    • 公共インフラの整備や民間による開発プロジェクトなど、その土地を活用しようとする試みが阻害される。所有者不明であることにより、プロジェクトが遅延したり、計画が中止に追い込まれることもある。
    • 所有者の同意が必要な手続きが進められないため、社会的に有益な利用が見送られるケースが発生する。
  3. 所有者探索の負担:
    • 土地を活用しようとする際、所有者を見つけ出す必要があり、これには相当な時間と費用がかかる。特に、相続が複雑に絡んでいる場合、所有者の特定は一層困難になる。

土地管理の不足

  1. 放置土地の増加:
    • 管理者不在の土地は適切な維持管理が行われず、荒廃が進む。これにより、地域の景観が損なわれるだけでなく、ゴミの不法投棄などの社会問題の原因となることもある。
  2. 周辺地域への悪影響:
    • 放置された土地は、隣接する土地にも悪影響を及ぼす。例えば、雑草の繁茂による害虫の増加、不衛生な状態が周囲の環境に影響を与える。
    • さらに、災害時においては、これらの土地が避難路や復旧作業の妨げとなり、地域の安全性を損なう可能性もある。

以上のような背景を踏まえて2021年3月5日に民法・不動産登記法の法改正案が閣議決定されたことにより相続登記が義務化されることになりました。

2024年4月から相続登記は義務化されています。

参考|法務省 相続登記の申請義務化について

相続登記義務化に伴う罰則

相続登記義務化後は不動産を相続した際には、その事実を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。期限を守らずに登記をしなければ10万円以下の過料が課されることがあります。具体的には、自分が相続人であることと、相続によって不動産の所有権を得たことを知った日がスタートラインとなります。不動産の存在を知らなければ、この義務は発生しません。

ケース1: 遺言書がある場合

  • 遺言により不動産の所有権を獲得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

ケース2: 遺産分割協議が成立した場合

  • 相続人であることと、相続財産に不動産が含まれていることを知った日から3年以内に、協議に基づく相続登記を行う必要があります。

ケース3: 遺産分割協議が成立しなかった場合(法定相続の場合)

  • 相続人であることと、相続財産に不動産が含まれていることを知った日から3年以内に、法定相続分による相続登記を行わなければなりません。
  • その後、遺産分割協議が成立すれば、その成立日から3年以内に新たに相続登記を申請する必要があります。

この規則は、相続による不動産の所有権移転を明確にし、将来のトラブルを防ぐためのものです。相続が発生した場合は、早めに関連情報を確認し、必要な手続きを行うことが重要です。

過去に遡る相続登記の対応方法


相続登記の義務化は、令和6年4月1日から施行され、この日以前に発生した相続にも適用されます。これは、法律が過去に遡って効力を持つことを意味し以前に相続したがまだ登記をしていない不動産も登記をしなければならなくなります。登記する期限、法律施行日または不動産を相続したことを知った日のどちらか遅い日から3年以内です。この期限を守らないと10万円以下の過料が課されることになります。

過去に遡って未登記不動産の相続登記する手続きは次のとおりです。

ステップ1: 相続登記の申請

相続登記の申請は、相続した不動産の住所地を管轄する法務局で行います。遠方の場合は郵送やオンライン申請が可能ですが、オンライン申請には総合ソフトのダウンロードや電子署名の準備が必要です。特殊な相続登記の場合は、郵送による手続きが推奨されます。

ステップ2: 必要書類の準備

相続登記には以下の書類が必要です:

  • 登記申請書
  • 亡くなった人の戸籍謄本、除籍謄本、住民票除票
  • 相続人の戸籍謄本と住民票の写し
  • 相続関係説明図
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 登録免許税

登記申請書は法務局のウェブサイトからダウンロードでき記載例も確認できます。

参考|法務局 不動産登記の申請書様式について

相続登記にかかる費用

相続登記に関連する費用は主に「必要書類の取得費用」「登録免許税」「司法書士報酬」がかかります。

必要書類の取得費用

相続登記に必要な証明書は市町村役所で発行してもらえます。

証明書の種類手数料(1通あたり)
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)450円
除籍謄本(除籍全部事項証明書)750円
改製原戸籍謄本750円
戸籍の附票の写し300円
(除)住民票の写し200~300円(自治体による)
印鑑証明書200~300円(自治体による)
固定資産評価証明書200~400円(自治体による)

被相続人や法定相続人の戸籍謄本は5~10通程度が必要になる場合が多いです。

相続関係が複雑で場合や代襲相続や数次相続が発生している場合は必要な戸籍の通数が数十通にも及ぶことがあります。

戸籍謄本は本籍地を管轄する市区町村役所でのみ取得可能です。本籍地が遠方の場合は交通費や郵送費用が追加でかかります。一部の自治体ではマイナンバーカードを利用したコンビニ交付も可能ですが、対応は自治体により異なります。事前に確認することをおすすめします。

相続登記の登録免許税

相続登記における登録免許税は不動産の相続に際して国へ納める税金です。以下の要点に基づいて算出されます。

  1. 登録免許税の計算:
    • 税額は、不動産(土地や建物)の固定資産税評価額に応じた税率を適用して計算されます。相続による所有権移転の場合、税率は0.4%(1000分の4)です。例えば固定資産税評価額が1000万円の土地の場合、登録免許税は4万円になります。
  2. 遺贈による登録免許税:
    • 遺言により法定相続人以外に不動産が譲渡される「遺贈」の場合、税率は2%(1000分の20)となり、同じ評価額の土地では登録免許税が20万円になります。
  3. 登録免許税の免税措置:
    • 特定の条件下では、登録免許税が免税となる場合があります。これは令和7年3月31日までの期間限定であり、以下のケースが対象です。免税は土地にのみ適用され、建物の相続には適用されません。
相続人が相続登記をせずに亡くなった場合の土地。
評価額が100万円以下の土地の相続登記。
評価額が100万円以下の土地の相続登記。

相続登記の際はこれらのポイントを踏まえて登録免許税の支払いや可能な免税措置の適用を検討することが大切です。特に遺贈による所有権移転の場合は法定相続人以外への譲渡が予想されるため、より高い税率が適用される点に注意が必要です。

参考|法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について

司法書士報酬

司法書士による相続登記の報酬は、一般的には5万円から15万円の範囲内で設定されています。地域や相続案件の具体的な複雑さによって上下することがあります。

また、相続人の数が多い場合や不動産の個数が複数あるような状況では基本の報酬額に加えて追加の報酬が必要になるケースがあります。さらに、相続登記の過程で戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成など、特別な作業が要求される場合には、それらの作業に対する別途の報酬が発生する可能性があります。
司法書士の報酬は自由化されており、各司法書士事務所がそれぞれの報酬額を設定しています。そのため、依頼前には直接司法書士に報酬について問い合わせる必要があります。

報酬規程表の提示義務

司法書士事務所は、報酬の基準額を定めた報酬規程表を設けており、依頼者に対してこれを提示し説明する義務があります。また、依頼者は報酬規程表をもとにした説明を受けた上で、サービスを依頼するかどうかを決定します。また、見積もりの作成を依頼することもできます。

相続登記のよくある質問

相続登記におけるよくある質問をまとめました。

Q: 相続登記はどれくらいの期間で行う必要がありますか?

A: 相続発生から3年以内に登記をすることが推奨されます。2024年4月以降は義務化され期限を過ぎると罰則が課される可能性があるります。早めに手続きを進めましょう。

Q: 相続登記の手続きには何が必要ですか?

A: 戸籍謄本、相続関係説明図、遺産分割協議書など、故人と相続人の関係を証明するための書類や不動産の権利書が必要です。詳細は法務局や専門家に相談してください。

Q: 相続登記の手続きは自分でできますか?

A: 可能です。しかし、複雑な場合や不安がある場合は司法書士に依頼するとスムーズに進むでしょう。料金は地域やケースにより異なります。

相続登記の手続きを円滑に進めるポイント

相続登記の手続きを円滑に進めるためのポイントをまとめました。

  1. 書類の準備: 故人の戸籍謄本や不動産の詳細が記された登記簿謄本など、相続手続きに必要な全ての書類を集めましょう。
  2. 家族との協力: 相続に関わる家族や関係者との意見の一致が重要です。事前にしっかりと話し合い、合意形成を目指してトラブルを回避しましょう。
  3. 専門家の助言: 司法書士や弁護士などの相続登記に詳しい専門家に相談することも有効です。彼らからの具体的なアドバイスにより、手続きをより効率的に進めることができ、時間と労力を節約できます。

これらの準備をしっかりと行うことでスムーズに相続登記を進めることができるでしょう。

相続登記のまとめ

相続登記は故人の意志を尊重し相続人の権利を確実に守るために必要不可欠な手続きです。故人が残した不動産の名義を正式に相続人に移転することで、将来の紛争を防ぎ、スムーズな資産の承継を行うことができます。

相続登記は、相続人間の協議、必要書類の収集、そして法務局への申請が含まれます。2024年4月1日からは義務化されています。遺産分割協議から書類提出まで準備をしっかりと行い、必要書類を集めて慎重に踏み出すことで手続きをスムーズに進めることができるでしょう。

相続登記は複雑な手続きが多くあるため専門家に相談することもおすすめです。この記事が相続登記の重要性とその手続きについて理解を深める手助けとなり、適切な準備と行動で相続登記を円滑に進めることができれば幸いです。

適切な相続登記で故人の意志を尊重し、相続人としての権利を守りましょう。

関連記事

  1. 建ぺい率と容積率の違いについて基礎知識に触れて解説

  2. 土地を売却する際の費用や相場は?確定申告や査定など流れも解説

  3. 借地権とは?初心者でもわかりやすく簡単に解説

  4. 路線価とは?簡単に計算する方法と記号の見方を紹介!

  5. 不動産コンサルは怪しい?依頼料金相場やおすすめの大手コンサル会社ランキング

  6. 借地借家法とは?わかりやすく法改正後の特徴や借地権の種類を解説

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CATEGORY