共有名義の不動産売却の方法は?税金や離婚時の対応についても解説

共有名義の不動産を売却する際、単独名義の不動産よりも手続きが複雑になりやすいため、事前に内容を理解しておくことで将来的なトラブルを防ぐことができます。

本記事では、共有名義の不動産を売却する方法をはじめ、売却にかかる税金や諸費用、手順などについてくわしく解説します。

共有名義の不動産は売却できる

夫婦で共同購入したり、兄弟間で親の不動産を相続したりなど、一つの不動産を複数人で所有(共有名義)しているケースは珍しくありません。しかし、離婚などを機に共有名義の不動産を売却したい人もいるでしょう。

結論、共有名義の不動産は売却することが可能です。ただし、共有名義の不動産を売却する行為は“処分行為”と呼ばれ、共有者全員の合意が必要となります。共有者一人の判断で不動産を処分することはできないので注意しましょう。

共有名義の不動産を売却する方法

共有名義の不動産を売却する方法には、以下5つのパターンが挙げられます。

  • 共有者全員の合意を得て売却する
  • 他の共有者へ自己持分を売却する
  • 第三者へ自己持分を売却する
  • 司法手続きを経て売却する
  • 分筆で土地を分割し売却する

ここで、それぞれの売却方法についてくわしく解説します。

共有者全員の合意で売却する

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の合意が必要です。共有者全員の合意を得て不動産を売却した場合、不動産は一つの物件として市場に出されることになりますが、売却で得た収益は共有者全員の持ち分に応じて分配されます。

仮に共有名義の家に住んでいる共有者が売却に反対するなら、リースバックを利用する方法もあります。これは不動産会社に一度家を売却し、その後に賃貸契約を結ぶ方法です。家賃を払い続けることで、売却後も所有していた家に住み続けることができます。

自分の持分を共有者へ売却する

共有者全員の合意が得られない場合でも、自分の持分を他の共有者へ売却することが可能です。不動産を共有しているのは兄弟や夫婦などの親族であるケースが多いため、関係性が良好であればスムーズに話し合うこともできるでしょう。

一方で、相場よりも極端に安い価格で売却した場合は、受け取った側に贈与税が課税される可能性があります。贈与税は年間110万円までの非課税枠があるものの、これを超えれば課税対象となるため注意しましょう。

自分の持分を第三者に売却する

自分の持分を共有者以外の第三者に売却する方法もあります。一般的に共有持分の買い取りはメリットが少ないため第三者となる購入者が現れにくいものですが、なかには共有持分の買取を専門とする業者も存在します。

確実に売却できる反面、売却価格が大幅に安くなる傾向(適正価格の50〜70%程度)にあるため注意が必要です。

また共有持分の買い取りを専門とする業者は、売却が成立したあともほかの共有者(共有持分権者)に対して売却話を持ちかける可能性があるため、将来的なトラブルに繋がりかねません。

現実的に考えても、おすすめできる売却方法とは言えないでしょう。

そのほかの売却方法

このほかにも司法手続きを経て売却する方法や、分筆で土地を分割して売却する方法もあります。

もしも共有者の間で不動産売却の合意が得られなかった場合、裁判所に申し立てることで「共有物分割請求訴訟」を起こすことができます。これにより共有名義の不動産を物理的に分割するか、売却して利益を分配することを請求することが可能です。

とはいえ、共有物分割請求訴訟は話し合いで解決できない場合に行う売却方法です。最終手段として考えておくとよいでしょう。

そして共有名義の不動産が土地だけの場合は、分筆してから売却する方法もあります。これは登記簿で一つとされている土地を複数に分割するものです。共有者それぞれの持分割合に応じた面積で分け合い、各自で所有権の登記を済ませれば、それぞれで自由に売却できるようになります。

繰り返しにはなりますが、分筆による売却は対象となる不動産が土地である場合のみです。

共有名義の不動産売却にかかる税金や諸費用

共有名義の不動産を売却する際に発生する税金や諸費用について、以下にまとめました。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 司法書士報酬
  • 仲介手数料

印紙税は、売買契約書や領収書に対して課税される税金です。共有名義の不動産を売却する場合は、売却相手と交わす売買契約書に対して必要となります。印紙税の税額は売却金額に応じたものとなりますが、500万円以上1億円以下の場合は5,000円から3万円程度が目安です。

登録免許税は、不動産の登記を行う際に発生する税金です。たとえば対象の不動産に住宅ローンが残っているなどで抵当権がついている場合、抵当権の抹消登記をするために登録免許税が課税されます。また、名義変更の際も登録免許税が必要です。

また抵当権の抹消登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬も必要となります。相場は5,000円から1万円程度です。

そして不動産会社(仲介会社)を通じて共有名義の不動産を第三者へ売却した場合、仲介手数料が発生することも忘れてはいけません。仲介手数料は売買契約書に記載されている売却金額に応じて上限額が決まっています。

たとえば共有名義の不動産を税抜500万円で売却した場合、仲介手数料として23.1万円が発生します。

共有名義の不動産売却で用意するものや手順

共有名義の不動産を売却する際、次の書類を用意する必要があります。

  • 権利証
  • 土地測量図(境界確認書)
  • 印鑑登録証明書・実印
  • 身分証明書・住民票

そして、共有名義の不動産を売却する手順については次のとおりとなります。

  1. 各名義人の持分割合を把握する
  2. 不動産の売却価格を把握(査定)する
  3. 共有者同士で売却方法を話し合う
  4. 各名義人それぞれで確定申告を行う

売却方法によってかかる費用や流れも異なりますが、今回は「共有者全員の合意を得て売却する」ケースで準備物や手順について解説していきます。

共有名義の不動産を売却する際の必要書類

まずは必要書類について紹介します。

権利証

不動産の正式な所有者であることを証明する権利証(もしくは登記識別情報)は、共有名義の不動産を売却する際にも必要になります。

とはいえ、平成17年以前に共有名義で登記した不動産は、権利証が一冊しか発行されないため、共有人すべてが所有していないケースもあります。

この場合、法務局による「事前通知制度」や弁護士や司法書士による「資格者代理人による本人確認情報制度」を利用して、所有者であることを証明しなくてはなりません。

土地測量図(境界確認書)

共有名義の不動産に土地が含まれている場合、土地測量図や境界確認書を用意する必要があります。境界については法務局で調べることが可能ですが、売却時に利用する不動産会社に依頼するとスムーズです。

印鑑登録証明書・実印

売買契約書には実印で捺印する必要があります。実印はもちろん、3ヶ月以内に発行された印鑑証明書も用意しましょう。

身分証明書・住民票

共有名義の不動産を売却する場合、所有者本人であることを証明するために身分証明書が必要となります。また登記簿上の住所から転居(転出)している場合は、3ヶ月以内に発行された現住所の住民票を提出しなくてはなりません。

確定申告も!共有名義の不動産を売却する手順や流れ

次に共有名義の不動産を売却する手順や流れを説明します。

各名義人の持分割合を把握する

まずは登記事項証明書を参考に、各名義人の持分割合を把握します。登記事項証明書は法務局で取得することが可能です。

また法定相続分を参考にして持分割合を決める方法もあります。法定相続分は各相続人に対し決められているため、持分割合の参考になるでしょう。

不動産の売却価格を把握(査定)する

売却価格を知るには、周辺の相場を把握した上で不動産会社に査定を依頼する方法がスムーズです。土地の場合は、実勢価格や路線価などからある程度の相場を知ることができます。

共有者同士で売却方法を話し合う

共有者同士でどのように売却するか話し合います。一般的には共有者全員の合意を得て物件を売却し、その利益を分配する方法がおこなわれます。

売却方法のパターンについては、前述の「共有名義の不動産を売却する方法」の項目を参考にしてみてください。

各名義人それぞれで確定申告を行う

不動産の売却で利益が生じると税金が発生するため、確定申告が必要になります。それぞれの持分によって売却価額や譲渡費用が異なるため、確定申告は各人で行わなくてはなりません。忘れずにおこないましょう。

トラブルを避けるために!共有名義の不動産を売却する際のポイント

共有名義の不動産を売却する際は、単独で売却するケースと違って将来的なトラブルに発展するケースもあります。ここで、トラブルを避けるためのポイントや売却時に知っておきたいポイントについてご紹介しましょう。

買取業者への売却はなるべく避ける

「自分の持分を第三者に売却する」でも解説しているとおり、買取業者への売却には将来的なトラブルが懸念されます。たとえば安く買い叩かれたり、高値で転売しようとしたりするケースも珍しくありません。

また買取交渉が難航すると、共有物分割請求をされる可能性もあります。業者とのトラブルは、最終的に訴訟トラブルにまで発展するリスクがあるため、買取業者への売却はなるべく避けるほうがベターと言えるでしょう。

勝手に共有持分を売却されたときの対処法を知っておく

もしも他の共有者が勝手に買取業者へ共有持分を売却した場合、次のような対応が必要になります。

  • 売却された共有持分を自ら買い取る
  • 自分の共有持分を売却する
  • そのままの状態をキープする

共有持分専門の買取業者との共有状態をキープすることもできますが、将来的なトラブルを考えるとおすすめできません。手放しても構わない場合は、自分の共有持分を売却して現金化したほうが有効活用できるでしょう。

また共有名義の不動産を所有し続けたいのであれば、売却された共有持分を自ら買い取って単独所有にする方法もあります。業者から高値で売りつけられることがないように、価格の相場を調べておくと安心です。

よくあるトラブルや離婚時は?共有名義の不動産売却で知りたい疑問を解決

最後に、共有名義の不動産を売却する際のよくある疑問についてまとめました。

共有名義の不動産を売却する際に起こりやすいトラブルは?

考えられるのは、共有者全員の意見がまとまらなかったり、一部の共有者と連絡が取れなくなったりするトラブルです。

売却について意見がまとまらなければ、売却の話そのものが頓挫するほか、訴訟に発展する可能性もあります。なにより、共有者全員の合意が必要であるにもかかわらず一部の共有者と連絡が取れない場合は、売却に関する話し合い自体ができなくなります。

一部の共有者と連絡が取れない場合は、弁護士に相談することで解決できる場合があるでしょう。

離婚したら共有名義の不動産はどうなる?

一般的には共有名義のままで売却することになりますが、どちらか一方が対象の不動産に済み続ける場合は夫婦間で協議をおこない、名義変更をする必要があります。

ただし、住宅ローンの返済中に担保不動産の名義変更を行う場合には融資先(銀行など)の許諾が必要になるので注意しましょう。

そもそも不動産の共有を避けることはできる?

共有持分の不動産は、後から放棄することが可能です。放棄した場合に報酬が発生する決まりはありませんが、不動産の場合は無償譲渡という形で手放すのが一般的と言えるでしょう。

共有名義の不動産売却に関する知識を身につけてトラブルを回避

共有名義の不動産を売却する際は、他の共有者全員の合意を得る必要があります。ただし、自分の持分だけを他の共有者に売却する方法もあるので、共有者全員の合意が得られなかったとしても売却できなくなるわけではありません。

共有持分を専門とする買取業者も存在しますが、トラブルを避けるためにもできるだけ当事者間で話し合って売却を決めたいもの。そのためにも、共有持分を売却するパターンや流れを把握したうえで売却話を持ちかけてみてはいかがでしょうか。

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