不動産を購入する際に、借地権物件という表記の物件が見受けられることがあります。
通常の物件とこの借地権付きの物件は何が異なるのか、借地権の運用に関わる借地借家法に基づきながらその内容を説明していきます。
借地借家法とは?簡単にわかりやすく解説
借地借家法とは、借地人(建物を所有するために土地を借りる人)や借家人(建物を借りる人)を守るための法律です。
賃貸借契約で弱い立場になりがちな賃借人を保護するため、借主にとって借地借家法よりも不利な契約条件は無効とされます。
借地借家法で定められている主な内容は、以下のとおりです。
・賃貸借に関する権利
・賃貸借契約の更新
・賃貸借契約の解約
・賃貸借の存続期間など
また、借地借家法では、普通借地権と定期借地権の2つの借地権が定められています。
借地借家法が定められた理由や歴史!法改正で何が変わる?
現在の借地借家法は、1921年の借地法と借家法の制定をはじめ、1941年や1966年の改正、そして1992年の借地借家法の制定を経て誕生しました。1941年の改正では、正当な理由がない限り地主は契約更新を拒否できなくなり、1996年の改正では、借地人が貸主の承諾を得られないときに裁判所の許可を得て借地権を譲渡・転貸できるようになりました。さらに、1992年の借地借家法の制定により、定期借地権が創設されています。
また、直近では、2022年5月に改正が行われています。
主な改正ポイントは、以下のとおりです。
・定期借地権の特約に関して電子契約が可能になった
・定期建物賃貸借における事前説明、書面交付、契約が電子契約が行えるようになった
借地借家法の適用になる土地
借地借家法が適用されるのは、建物を建設して所有することを目的とした土地に限られます。そのため、すべての土地が借地借家法の対象になるわけではありません。
例えば、駐車場用地には民法の賃借権が適用されます。
土地を借りる目的によって適用される法律が異なる点には注意が必要です。
借地借家法が適用されるかどうかは、賃貸する土地が建物所有を目的としているかどうかで決まることを理解しておく必要があります。
借地借家法にある借地権と借家権とは?
借地権とは、賃貸借契約にもとづき建物を建設するために賃料を支払って他人から土地を借りる権利のことです。一方、借家権は、賃貸借契約にもとづいて賃料を支払いながら建物を使用する権利を指します。
また、借地権と借家権では、存続期間(契約期間のこと)も異なります。
借地権 | 借家権 | |
特徴 | 地上権と賃借権がある | 建物の賃借権のこと |
存続期間 | 30年以上※契約更新1回目は20年以上、2回目以降は10年以上 | 自由に設定が可能※1年未満で定めた場合は期間の定めがないものとされる |
契約更新の請求に対して | 地主は正当な事由がない限り拒絶できない | 貸主は正当な事由がない限り拒絶できない |
【借地借家法の借地権に関する法律】旧法借地権と新法借地権の違いは?
旧法借地権と新法借地権には、存続期間や更新後の期間など、いくつかの違いがあります。
旧法借地権 | 新法借地権 | |
存続期間 | 非堅固な建物:20年以上(期間の定めのない契約:30年)堅固な建物:30年以上(期間の定めのない契約:60年) | 通常の借地権:30年以上(期間の定めのない契約:30年)定期借地権:一般定期借地権50年以上建物譲渡特約付借地権30年以上事業用借地権10〜50年 |
更新後の期間 | 非堅固な建物:20年以上堅固な建物:30年以上 | 通常の借地権:1回目の更新20年以上、2回目以降の更新10年以上定期借地権:更新なし |
建物が朽廃した場合 | 期間の定めがある場合:期間満了まで権利は継続期間の定めがない場合:権利は消滅 | 建物の朽廃で権利が消滅することはない |
建物が減失した場合 | 権利が消滅することはない | 権利が消滅することはない※初回更新後であれば解約可 |
ここでは、旧法借地権と新法借地権の特徴や違いについて見ていきましょう。
旧法借地権の特徴
旧法借地権は、建物のつくりによって存続期間や更新後の期間が異なります。
存続期間 | 更新後の期間 | |
非堅固な建物※木造など | 20年以上(期間の定めのない契約:30年) | 20年以上 |
堅固な建物※鉄骨鉄筋コンクリート造など | 30年以上(期間の定めのない契約:60年) | 30年以上 |
旧法借地権では、建物が朽廃した際、契約期間が定められていればその期間が満了するまで権利は続きますが、期間が定められていない場合は権利が消滅します。ただし、建物が減失した場合には、権利が消滅することはありません。
新法借地権の特徴
新法借地権では、定期借地権制度が創設されました。定期借地権制度には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の3種類があります。
新法借地権の場合、建物の種類によって存続期間が変わることはありません。通常の借地権と定期借地権では、当初の存続期間や更新後の期間は異なります。
存続期間 | 更新後の期間 | |
通常の借地権 | 30年以上(期間の定めのない契約:30年) | 1回目の更新:20年以上2回目以降の更新:10年以上 |
定期借地権 | 一般定期借地権:50年以上建物譲渡特約付借地権:30年以上事業用借地権:10〜50年 | 更新なし |
新法借地権では、建物が朽廃しても権利が自動的に消滅することはありません。また、建物が減失した場合にも借地権が消滅することはありません。建物が減失しても借地権は消滅しません。ただし、新法借地権では初回更新後であれば、建物の減失により解約することが可能です。
契約更新拒絶する場合の正当な事由について、旧法より定義が明確になっています。
【借地借家法の借地権に関する法律】借地権の種類と定められている内容
ここでは、普通借地権と定期借地権の主な特徴について見ていきましょう。
普通借地権
普通借地権は、旧借地権の性質を引き継ぎ、土地を借りている人(借地人)が強く保護される権利です。建物の種類に関わらず、普通借地権は更新が可能です。
契約期間は30年以上で、更新する場合、1回目は20年、2回目以降は10年となります(合意があればさらに長期間も可能)。
普通借地権では、地主が契約を解除するには正当な理由が必要で、さらに高額な立ち退き料が必要です。そのため、地主側からすれば、普通借地権で契約すると、半永久的に利用権が戻ってこないことも考えられます。
定期借地権
定期借地権は、契約更新がなく、存続期間満了時に契約が終了します。そのため、地主側からすると、立ち退き料も発生しないため、安心して土地を貸すことが可能です。
定期借地権には以下の3種類があります。
・一般定期借地権:利用目的に制限はなく、契約期間は50年以上で、期間満了時に建物の買取請求は発生しません。借主は更地にして返却する必要があります。
・事業用定期借地権:コンビニやスーパーなど、事業用の建物を対象とした借地権で、存続期間は10年以上50年未満であり、借地人は更地にして返却する必要があるのです。
・建物譲渡特約付借地権:存続期間は30年以上で、期間満了後には地主が建物を買い取ります。
借地権つきの不動産を購入するメリットとデメリット
借地権付きの物件は不動産情報サイトでもよく見受けられます。
その借地権付きの物件を購入することではどのようなメリットとデメリットがあるのか具体例をまとめてご説明していきます。
借地権つきの不動産を購入するメリット
税金が発生しない
借地権付き物件は土地の所有権はあくまで地主です。そのため借地権付きの不動産を購入したとしても、借り主は土地に関する所有権を持つことができません。
その代わりに、固定資産税などの税金を支払う必要がありません。不動産を購入する時には不動産取得税や登録免許税といった税金も課されますが、購入時のそういった税金も非課税となります。
そのため物件を維持するためのランニングコストを抑えることができます。
購入価格が安い
借地権物件は土地の所有権を持つことができないため、土地と建物の所有権を両方購入する物件よりも価格がやや安く抑えられます。相場としては8割前後といったところが多いでしょう。
毎月の地代を支払わなければいけないという支出はありますが、時代の分を含めても購入コストは通常の物件よりも安くなるため、利回りが高い物件を探している方にとっては最適な物件になるとも言えます。
借地権つきの不動産を購入するデメリット
借地権付きの物件は所有権を購入者が持つことはできません。
それによって生じるデメリットを見ていきましょう。
毎月の地代がかかる
借地権付き物件の場合、地主に対して毎月一定の地代を支払います。そのため、税金がかからないと言っても毎月の支出額が大きくなってしまう傾向にあります。
また10年や20年といった借地権の契約が終わり更新する場合には、契約更新料として土地価格の5%程度の契約を結ぶことも多いです。
購入時に融資が受けづらい
不動産の購入時には金融機関からローンの融資を受けて購入する方も多くおり、不動産投資用ローンなどを利用するのが一般的です。
しかし購入する物件が借地権付きの物件の場合は購入不動産が担保としての価値が低いため融資が受けづらい、融資を受けられたとしても金利が高く条件が悪いなどといったデメリットが生じます。
そのため現金を豊富に持っていないと物件が購入できないこともあるのです。
土地の所有者ではないので自由度が低い
昨日券付き物件は借主の自由度が低いのがデメリットとなってきます。
建物の増築や改築また建て直しを行う際にも無印の許可を得る必要がありますし売却に関しても同様です。承諾費用がかかるかどうかは契約時の内容によって変わってくるので、購入する時には契約の内容をしっかりとチェックしておきましょう。
【借地借家法の借家権に関する法律】存続期間や定期建物賃借権とは?
定期建物賃借権は、契約期間が満了すると賃貸借契約が終了するタイプの契約です。そのため、契約の更新は認められません。建て替えや大規模修繕などを予定している場合に利用されます。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
貸借の目的 | 居住用と事業用どちらも可 | 居住用と事業用どちらも可 |
契約 | 公正証書等での契約 | 書面、口頭ともに可 |
存続期間 | 制限なし(1年未満も可) | 1年未満の契約期間の場合、期間の定めのない契約とみなされる |
更新 | なし | あり |
期間満了の通知 | 契約期間が1年以上の場合:1年前から6ヶ月前まで | 期間の定めのある場合:1年前から6ヶ月前まで |
賃料の増減 | 可(借地借家法32条)※特約がある場合はそれに従う | 可(借地借家法32条)※特約により減額請求権の排除はできない |
再契約 | 可 | 可 |
借地借家法で解約する方法は?どんな理由だと解約できるの?
借地借家法で解約する方法やその理由について理解しておくことは重要です。
借地借家法は基本的に貸主から中途解約できない
借地借家法は借主を保護する法律であり、貸主が契約の更新を拒否するには、正当な事由が必要です。また、貸主は高額な立ち退き料を支払わなければならない場合があります。
借地借家法は、貸主からの中途解約について厳しく制限していることを理解しておく必要があります。
借地借家法を中途解約できる正当な事由
借地借家法において、中途解約の正当な事由が何に該当するか、裁判等では以下のポイントをもとに総合的に判断されます。
・貸主と借主双方が土地・建物の使用を必要とする事情
・建物の賃貸借の経緯
・建物の利用状況
・建物の現況
・立退料の金額
例えば、立退料を支払うことが必ずしも正当な事由として認められ、中途解約ができるわけではありません。
正当な事由がなくても解約する方法
貸主が借主の借地権を買い取る、または借主が貸主の底地権を買い取ることで、契約期間を終了させることが可能です。借地権と底地権の一部を譲渡し合い、等価交換する方法もあります。
また、契約更新のない定期借地権を選ぶことで、正当な事由がなくても契約を終了させることができます。
借地権がなくなることはある?借地借家法に関する質問まとめ!
借地権に関して頻出する質問をまとめました。借地権について疑問がある方は是非とも確認して押しておいてください。
賃借人が死亡した場合はどうなる?
借地権を相続の借主である賃借人が死亡した場合は、相続財産として相続人に受け継がれます。例えば借地権付きの土地を毎月1万円で支払って賃貸物件を運営していた場合、賃貸物件を運営する土地の権利を有しながら賃貸物件を運営し、毎月地代1万円を支払う契約も継続されるということです。
借地権がなくなることはある?
借地権は一定の契約期間において終了する可能性がありますが、それ以外で借地権が消滅証明できるのは建物が朽廃した時となります。
朽廃とは、建物が自然に腐食していき建物として利用する価値がなくなってしまうことを指します。一方で建物が火災や震災などで倒壊した場合は朽廃にならず、また建て直すことも可能です。
借地借家法を理解してトラブルのない家の貸し借りを
借地借家法は旧法借地権と新借地権に分かれており、旧法借地権は借主の権限が非常に強い借地権となっています。一方で新借地権は契約の更新を一定期間にするなど、地主の権利を保護できるものとなっています。
借地権付きの物件は土地に関する権利に制限を受けますが、物件購入価格を安く抑えることができるため利回り重視の投資家の方にとっては見直せない物件だとも言えます。
ただし契約内容によってできることできないことが変わってくることもあるので、しっかりと購入時には宅地建物取引士立会いのもと、その契約内容を確認してから購入するようにしましょう。
そうすることで運営上の損失を防ぐことができます。
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