路線価とは?
路線価とは、道路(路線)に面する土地の1平方メートルあたりの価格です。土地の評価に使用される価格の一つであり、相続税や贈与税を計算する際の基準(財産評価基準)として一般的に利用されます。
路線価には、相続税や贈与税を計算する際に用いる「相続税路線価」と、固定資産税や都市計画税などを計算する際に用いる「固定資産税路線価」がありますが、一般的に「路線価」というと相続税路線価を指します。
路線価は、国税庁が毎年公表しており、価格は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認可能です。価格は千円単位で表示されます。
また、土地の評価額には、路線価以外にも公示地価や基準地価などがあります。
路線価が決まる流れ
路線価は、毎年1月1日が評価時点で、7月1日に国税庁から公表されます。1月〜6月の間に、専門家(不動産鑑定士など)による鑑定評価額や公示価格、売買事例、都市計画情報などをもとに、税務署(国税庁)が路線価を決定する流れです。
評価時点が1月1日であるため、相続した土地がその時点で高い価格で、後に価格が低くなったとしても、評価対象は1月の価格となります。評価時点と公表の時期には時間差があることを理解しておきましょう。
路線価の種類
路線価には、相続税路線価と固定資産税路線価の2種類があります。
それぞれの詳細は、以下のとおりです。
相続税路線価 | 固定資産税路線価 | |
主な用途 | 相続税や贈与税の計算 | 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の計算 |
評価時点 | 毎年1月1日 | 毎年1月1日 |
更新頻度 | 毎年 | 3年に1度 |
公表日 | 7月1日 | 4月頃 |
評価主体 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
価格 | 公示地価の80%程度 | 公示地価の70%程度 |
固定資産税路線価は、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税などの計算に利用されます。
相続税路線価は毎年更新されますが、固定資産税路線価は3年に1度の更新です。専門家による鑑定評価額などをもとに、市町村(または東京都)が価格を決定します。
同じ「路線価」であっても、相続税路線価と固定資産税路線価では公示地価の70%〜80%程度と価格が異なります。
土地を評価する路線価以外の価値
土地の価格には、路線価以外に「時価(実勢価格)」「地価公示価格(公示地価)」「都道府県地価調査価格(基準地価)」などがあります。
これらの価格はそれぞれで用途や算出方法、評価対象が異なります。
各価格の詳細は、以下のとおりです。
時価(実勢価格) | 地価公示価格(公示地価) | 都道府県地価調査価格(基準地価) | |
概要 | 不動産を取引するときの価格のこと。決まった価格はない | 全国約2万6,000か所の「標準地」1平方メートルあたりの価格 | 全国約2万2000か所の「基準地」1平方メートルあたりの価格 |
主な用途 | 不動産の取引価格を決める際に参考にする | 土地取引、不動産鑑定、公共事業用地の取得価格算定などの際に参考にする | 土地取引などの際に参考にする |
評価主体 | ー | 国(国土交通省土地鑑定委員会) | 都道府県知事 |
評価時点 | ー | 1月1日時点 | 7月1日時点 |
公表日 | ー | 3月中旬〜下旬頃 | 9月中旬〜下旬頃 |
算出方法 | 類似した不動産の過去の取引事例などを参考に決定 | 不動産鑑定士による鑑定評価額を参考に決定(1地点につき2名以上が評価) | 不動産鑑定士による鑑定評価額を参考に決定(1地点につき1名以上が評価) |
評価対象 | 取引する不動産 | 都市計画区域から選定される土地(標準地) | 都道府県が選定する「基準地」(都市計画区域内以外の土地も対象) |
特徴 | 市況の影響を受ける | 毎年ほぼ同じ場所が評価されるため、地価の変動がわかりやすい | 公示地価が公表されて半年後の地価を評価する |
それぞれの価格について、詳しく見ていきましょう。
時価
時価(実勢価格)とは、不動産が取引される際の価格を指します。路線価や公示地価、基準地価とは異なり、特定の評価時点や公表日は設定されていません。必要な時点で、類似する不動産の過去の取引事例などを参考にして価格が決まります。例えば、土地を売却する際は、不動産会社と売主が協議し、売り出し価格を決定します。
また、時価は市場の影響を受けやすく、需要が高いときには価格が上昇し、需要が低いときには価格が下がる傾向があるため常に一定ではありません。そのため、同じ不動産であっても売買時期によって価格に差が生じます。なお、時価(実勢価格)の目安は、公示価格の1.1〜1.2倍とも言われています。
地価公示価格
地価公示価格(公示地価)は、全国に約2万6,000か所ある「標準地」の1平方メートルあたりの価格です。地価公示法にもとづき、国土交通省土地鑑定委員会が主体となり、都市計画区域から標準地を選定し、評価を行います。評価する際は、不動産鑑定士(1か所につき2名以上)による鑑定評価額が参考にされています。
公示地価は、客観的で中立的な指標として、土地取引や不動産鑑定の際に活用される価格です。毎年、ほぼ同じ場所の価格が国によって評価・公表されるため、地価の変動を把握するのにも役立ちます。
評価時点は毎年1月1日で、3月に公表されます。
公示地価は、国土交通省のWebサイト「標準地・基準地検索システム」で調べることが可能です。
都道府県地価調査価格
都道府県地価調査価格(基準地価)は、都道府県が選定する「基準地」の1平方メートルあたりの価格です。国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が不動産鑑定士(1か所につき1名以上)の鑑定評価額などを参考にして毎年決定します。
評価時点は毎年7月1日で、結果は9月に公表されます。都道府県地価調査価格は、毎年更新されるため、特定の場所の地価変動を把握する際に便利です。
公示地価は、1か所につき2名以上の不動産鑑定士が評価するのに対し、基準地価は1名以上の不動産鑑定士が評価します。また、都市計画区域内以外の土地も対象です。
地価公示価格の半年後の価格を評価するため、両方の価格を確認することで、より広範囲の土地の価格を具体的に把握することが可能です。
土地の評価額の調べ方は路線価方式と倍率方式がある
土地の評価額の算出方法・調べ方には、「路線価方式」と「倍率方式」があり、それぞれで内容が異なります。
・路線価方式:道路に面した土地の価格(路線価)をもとに評価額を算出します。この評価額は、相続税や贈与税の計算に使用されます。
・倍率方式:主に地方や郊外など、路線価が設定されていない土地の評価に用いられます。評価額は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて算出します。
路線価を調べる方法
路線価は、国税庁のWebサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で無料で確認できます。以下の手順で調べることができます。
1.「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にアクセスする
出典:国税庁
パソコンやスマホから国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にアクセスします。
2.都道府県を選択する
出典:国税庁
マップ上から希望の都道府県を選択します。
3.「路線価図」を選択する
出典:国税庁
「土地関係」の「路線価図」を選択します(路線価方式を希望する場合)。
4.市区町村を選択する
出典:国税庁
路線価を確認したい土地がある市区町村を選択します。
5.路線価図ページ番号を選択する
出典:国税庁
確認したい地名(町または大字)の路線価図ページ番号を選択すると、路線価図が表示されます。
路線価図の記号の見方は?
路線価図の数字や記号が示すものは、以下のとおりです。
出典:国税庁
・左側「XX 12345」部分:路線価図の年分とページ数が表示されている。
・真ん中の記号部分:地区と借地権割合の適用範囲を示す。
・右側の記号部分:借地権割合をアルファベットで示す。
出典:国税庁
路線価は千円単位で表示されます。例えば、「2150」と表示されている場合は、路線価が21万5,000円ということです。
路線価をもとに土地評価額を簡単に計算してみよう
例えば、路線価300C(30万円)の道路に面する700㎡の土地で奥行が35m、普通商業・併用住宅地区にある場合、
評価額は
「路線価 × 奥行価格補正率 × 土地面積」 |
で算出可能です。
奥行価格補正率は、国税庁のWebサイトで確認できます。
この場合、
「路線価30万円 × 奥行価格補正率0.97 × 土地面積700㎡=2億370万円」 |
となります。
また、スマホアプリ「鑑定の友」などを活用して路線価を確認することも可能です。
路線価の見方に関する気になる疑問
路線価の見方の基礎知識を知ったところで、より詳しく知っていきたいと思う方もいるでしょう。
また路線価をよく知ったからこそ、細かい点が気になるということもあるかもしれません。
そこで、路線価の見方に関する気になる疑問をいくつか取り上げたいと思います。
路線価を簡単に調べる方法はありますか?
路線価を簡単に調べる方法は、国税庁のホームページにアクセスして調べるのが一般的です。
ただし、国税庁のホームページは使いにくい側面もあり、専門的な知識のない方にとってはどうやって調べたらいいのかまた、どのように見たら良いのか迷ってしまうかもしれません。
そこで国税庁以外のホームページで、路線価を取り上げているサイトを見ていきます。
https://www.chikamap.jp/chikamap/Agreement
こちらのサイトでは地名を入れれば、すぐにどれくらいの路線価であるのかを地図上で表示してくれます。細かく地図を辿っていく必要がなく、ピンポイントで調べることができるので大変便利です。
路線価のDとは何ですか?
路線価を見ていくと、A〜Gまでのありファベットがついているものもあります。
このA〜Gまでのアルファベットは借地権割合を示しています。
Aは90%、Bは80%、Cは70%、Dは60%、Eは50%、Fは40%、Gは30%です。
例えば200Dと書いてあった場合は、路線価は1平方メートルあたり20万円、借地権割合は60%なので20万ー(20万×60%)=8万円が実質的な路線価の数字です。
路線価はなぜ8割程度なのか?
路線価は公示価格の約80%の数字だと言われています。
不動産の相場はシーズンを問わず目まぐるしく変動する一方で、路線価は1年に1度しか公開が行われないため、路線価を公開のタイミングよりあとに大きく相場が変動する可能性があります。そこで公示地価よりも低めの数字を出すことで、路線価と不動産の実勢相場との乖離をできるだけ小さくしているのです。
ただし公示地価通りに不動産売買が行われるとも限られているわけではありません。
都心部では公示地価よりも2倍程度の価格で売買されることも多いですし、地方では公示地価とほぼ同じ値段で売買されるケースも見受けられます。
この記事のまとめ
路線価は1年に1度国税庁から公表される数字であり、不動産の相場を示す指数として公示地価や固定資産税評価額と並んでよく使われています。
国税庁のホームページで公開されているので自分で調べることもできますし、役場などで調べることも可能です。
不動産売買を行う時は、まず路線価を調べてその価値がどの程度なのかをよく判断してから購入もしくは売却をすると良いでしょう。
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